経理に向いている人、向いていない人
経理担当がどのような人物かで、会社の財務体質まで変わってきます。多くの経理担当と接していると、「こういう人は経理に向いているなぁ。」と思わされることがあるのです。
例えば、経理業務の多くは月次単位で動いています。月次で決算が動いているからです。そのため、その月で処理すべきことは、翌月に持ち越さず、当月処理をしたいのです。建て替え払いや仮払いの精算などは、その最たるものです。
「社長!先週の出張の仮払い、早く精算してくれないと困ります!月次決算が進まないじゃないですか!」
と、上司や社長であろうと、平気で注意する経理担当を、これまでに何人も見てきました。そういう会社は、その経理担当がいるだけで、お金に関する期限が守られます。そのため、費用の月ズレはもちろん、期ズレも起こりません。
これが逆に、期日を守ることを強く言えない経理担当では困るのです。仮払金の未精算が月次だけでなく、年度の決算書にも残ります。
「決算書のこの仮払金は何ですか?」と経理担当に聞くと、「これ、社長の未精算分なんですが、社長には言えないです。」
などとおっしゃる経理担当がおられるのです。それでは困るのです。お金の管理がルーズになります。それに、決算書の仮払金は銀行からすれば、使途不明金です。お金の管理がずさんである、と見られます。実際に、そう見られても、仕方のない状態なのです。
社内の者にだけでなく、取引業者にも強く言える経理担当がいました。
「請求書は毎月3日までに届けてもらわないと困ります!郵送で間に合わなければ、メールでもいいので送ってください!」
ごもっともです。あるいは、
「振込手数料は御社負担なのに、請求額から差し引かれてますよ!振込み手数料分、次の請求書に追加するので気を付けてください!」
など。
こうなると、取引先も、
「あそこの経理担当は何かあるとうるさいから、きっちりやっておこう。」
となります。なので、相手先のミスも減ります。期日が守られ、ミスがなければ、それだけで、経理業務はスムーズに流れやすくなります。それは、守るべきルールを誰にでも注意できる経理担当がいればこそ、なのです。
期日管理に厳しい経理担当に加えて、“銀行を特別扱いしない”という経理担当も中小企業では必要となります。
というのも、銀行からお金を借りることに苦労した時代を経験している経理担当は、銀行に頭が上がらない、という方が多いです。いわゆる、“銀行サマサマ病”なのです。当時の苦労が身に染みているのです。
「今はそんな時代ではない。銀行を取り巻く環境は180℃変わっていますよ。」
と言っても、銀行に対する態度をなかなか変えれないのです。そしてそのような上司に育てられた若い部下もまた、同じように、銀行を特別扱いしてしまうようになるのです。そうなると、金利や手数料等の各種条件も改善せず、銀行の言いなりになってしまうのです。
その一方で、銀行に対してまったく特別扱いをしない経理担当もおられます。ICOの書籍やブログを読み、銀行交渉を地道に実践してきた経理担当などは、その傾向が強いです。そのような人にとっては、銀行も仕入れ業者のひとつ、という感覚です。
“貸してくれなかったら大変だから、銀行には強気で言えない。”などということは全くないのです。
格付け(スコアリング)の対策をして決算書を整え、ムダな借り入れをせずに自己資本比率を高める。膨らんできた資産があれば、何か縮めれるものはないかと探し、取り組んでゆく。そのような経理担当がいる会社は当然、財務体質が良くなります。
銀行を特別扱いする経理担当の場合、銀行から頼まれるがまま、不要なお金を借りたりします。借入金が増え、総資産がムダに膨張します。自己資本比率も悪くなります。余計な金利を払い、稼いだお金を流出させてしまいます。いいことが何もないのです。
経理担当がどのような人物か、ということだけで、中小企業の財務体質は大きく異なってきます。どうせなら、強い財務体質を意識して行動できる、経理担当であってほしいのです。と同時に、そのような経理担当が育つ背景には、経営トップの財務に対する理解が欠かせないのです。やはり社長自らが、財務体質の向上に対して、強い意識をもって取り組んだいただきたいのです。