今回はフェーズ4「 設計事務所、建設会社、売主 」の第六項目『 売主は設計者の良い面を引き出し、過去のマンネリ化した設計を押し付けない事。 』のお話を致します。
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- 第29回 売主は設計者の良い面を引き出し、今迄のマンネリ化した設計を押し付けない事
前回の第28回はフェーズ4の「 設計事務所、建設会社、売主 」の第五の項目で『 工法指定、メーカー指定や代理店指定の設計事務所やゼネコンとは付き合わない方が良い。 』でした。
今回の第29回も第24回、第25回、第26回、第27回、28回の内容に更に設計事務所やゼネコン選定基準や付き合い方法の重要さを御説明を致します。
毎回幾度と無く申し上げていますが、多くのディベロッパーの方々は、設計事務所やゼネコンの選定を上司や用地取得部署からの申し送りや、しがらみで決めております。もう、しがらみは捨てて、評判の良い設計事務所に依頼する事をお奨め致します。
用地部署がらみの設計事務所やゼネコンとだけ付き合っていましたら、何の進歩もなくそのディベロッパーはこの業界で勝ち残れないと思います。
そこで、今回は設計事務所との仕事の進め方に関してのアドヴァイスとして『 売主は設計者の良い面を引き出し、過去のマンネリ化した設計を押し付けない事。 』を是非実行して戴きたいので、そのお話を致します。
偶然にも先日、新聞にある超大手ディベロッパーがこれから供給するマンションは共用施設での他社との競争は止めて、住まい本来である住戸プランの差別化に力を入れるとコメントしていました。私にとってはまさに目から鱗の記事でした。
現在、販売している新規分譲マンションの住戸プランをチェック致しますと、どのディベロッパーもほとんど同じ住戸プランで、全く個性が有りません。逆に住戸プランを見ただけでは、売主名が設計者の私でも分りません。
ですので、顧客はブランドや信用力の高い大手ディベロッパーの物件を購入しますので、中堅ディベロッパーは苦戦しているのです。
では、何故に中堅ディベロッパーは同業他社とほぼ同じ住戸プランのマンションを供給しているのでしょうか…?
私が中堅ディベロッパーと一緒に仕事をしました経験から端的に申し上げれば、設計者が一生懸命になって計画した、今までに無い新鮮な良い住戸プランを提案しても、ディベの担当者は評価をしてくれますが、上司や販売部署を説得できないのです。
上司や販売部署の方々は、 今までに無い新鮮な良い住戸プランで分譲し、若し売れなかったら自分の責任になるのが嫌なのです。それよりも現在のどこにでも有る住戸プランで分譲し、売れなかったら上司も販売部署も社長や役員に言い訳ができ、怒られなくて済むからです。中堅ディベロッパーの多くは、特にこの傾向が顕著なのです。
ちなみに、自画自賛になり申し訳ないですが、私がお付き合いしている中堅ディベロッパーは、私が今までに無い新鮮な良い住戸プランを提案致しましたら、社長が会議室まで来られて一発で承認し、採用してくれました。そして分譲致しましたら、そのマンションの売れ行きがとても良かったのです。
中堅ディベロッパーこそ、設計者から今までに無い新鮮な良い住戸プランが出てきたら積極的に実現に向けて協議し、新規分譲マンションに反映させるべきです。設計者にやる気を起こさせて、今までに無い新鮮な良い住戸プランを作らせるのが、ディベロッパーの役目です。
そして、同業他社物件とは一味違うテイストを売りにして早期完売を目指すべきです。
その様な方向に会社全体を変えずに、今迄のマンネリ化した住戸プランを適当に配置するだけの指示では、設計者もやる気をなくしてしまいます。折角、何千万円という設計料を払って、設計事務所に依頼しているのですから、設計者のやる気をおこさせて今までに無い新鮮な良い住戸プランを作成させた方が良いと思うのですが如何でしょうか…。
先程もお伝え致しました様に超大手ディベロッパーでも今迄のマンネリ化した住戸プランに危機感を感じて、これからは共用部分の付加価値付けよりも、住まい本来の住戸プラン作成に力を注ぐと言っていますので、中堅ディベロッパーならば今計画中の物件が今迄の住戸プランの羅列であれば、直ぐに商品計画の練り直しをして設計者の良い面を引き出し、今までに無い新鮮な良い住戸プランを幾つか出させるべきだと思います。
中堅ディベロッパーであれば、設計者を上手に操り、やる気を起こさせて良い住戸プランを作らせ、新規分譲マンションに反映させ、業界での話題物件にさせて、超大手ディベロッパーと同様のブランド力と信用力を勝ち取って下さい。
次回はフェーズ4「 設計事務所、建設会社、売主 」の最後の第七項目『 商品企画時点には設計者との打ち合わせに…。 』の大切さを私の経験に基づいて具体的に御説明致します。期待して戴ければ幸いです。 以上
碓井民朗