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製造業

第264号 すぐ使わないモノ、すぐ動かない中間品が減らないのはなぜか

柿内幸夫─社長のための現場改善

 皆さん、こんにちは。今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実践編として実例を挙げます。

【急所71】すぐ使わないモノがあれば買い方に、すぐに動かない中間品があれば、造り方に問題があると考えよ。(166頁)
 
 毎日暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしですか? 私が子供の頃は“日射病”という症状がありましたが、今は“熱中症”です。
 
 昔は日射が原因でしたから、対策は帽子をかぶることや外に出ないことでしたし、それで十分に効果がありました。しかし今では、工場はもちろん、部屋の中でも熱中ですからどうすればいいのでしょうか?
 
 こまめな水分や塩分の補給、適切な休憩、そして首筋を冷やすなどいろいろな方法があるようですので、みんなで研究して未然防止対策を打ちましょう。倒れてしまってからの再発防止では遅いですからね。
 
 さて、今回は工場内にあるモノについて考えてみたいと思います。
 
 2ヶ月前に、D社で現場を歩いていた時のことです。私は現場の中央に置かれていたモノを指さして、「これは何ですか?」と工場長に質問しました。
 
 その答を聞いたところで、次に「どうしてこの数なのですか?」、そして、「ここに置くのはナゼですか?」と質問を続けました。
 
 すると、最初の質問にはしっかりした答が返って来ましたが、それから先の質問に対しては、ちゃんとした答は返って来ませんでした。
 
 数に対しては、「生産に間に合うように、少し早め・多めに作っていると思います」という答でした。場所に対しては、「ここしか置き場所がないので」という答でした。
 
 両方とも、何となくスッキリしない答ですね。しっかりした計画に基づいてされているとは思えない内容でした。
 
 これは、工程内の“作業”にはみんなが注目しているけれど、工程と工程の間の“運搬や停滞”にはあまり目が向いていないということの証拠でしょう。
 
 しかし、だからこそ注目するのです。なぜなら、これまで手がついていないので、気づいていなかった大きなムダが、ドカンとある可能性が高いからです。
 
 私はD社の在庫はもっと少なくても十分いけるし、ここに置かなくても大丈夫かもしれない、と思いました。そこで、表題の言葉(「すぐ使わないモノがあれば買い方に、すぐに動かない中間品があれば、造り方に問題があると考えよ」)をお話しました。
 
 もし、すぐ使わないモノがあれば、買い方に問題があると考えましょう。もし、すぐに動かない中間品があれば、造り方に問題があると考えましょう。大事なことなので、ひと言申し上げておきますが、止まっているものは、付加価値は生んでいません。
 
 そこで私は、皆さんに宿題を出しました。まずは工場長に出した宿題は、再び現場に行っていただくことでした。ただし、行くときは一人ではなく、そのモノに関係のありそうな人たちも連れて、一緒に行っていただくことにしました。
 
 具体的には、生産計画、物流、購買、生産といった担当の方たちです。そしてみんなで現場に行って、それぞれの担当者に、そのモノについて自分がやっている仕事の話をしてもらうのです。
 
 例えば、生産計画担当者は生産計画数と日程の決め方を、調達担当者は買う時のロットサイズの決め方を、運搬担当者は遅れが出ないようにするためのタイミングの取り方を、生産担当者は作りやすい生産順番を、説明してもらいます。
 
 というのも、実はモノの流れはいろいろな部署の人がした仕事の結果であって、一人ですべてを仕切っているわけではないからです。
 
 だから、工場長はなんとなく全体を知っていますが、細かいことは分かりません。逆に、それぞれの担当者は、自分の仕事に関するすべての詳細を知っていても全体のことは知らないのです。
 
 しかし、みんなが一緒に現場を歩いて、それぞれの人が自分の仕事のことを話すと、その場で全体最適の議論がされて、瞬間に解決する改善方法が生まれたりすることがよくあります。
 
 なぜなら、 「それは知らなかった、この際、みんなでこう変えたらいいよね!」といったことが起きるからです。
 
 D社でも、まさにこのような議論が起きたそうです。その結果、今はその場所には何もありません。すべてダイレクト運搬になったのです。
 
 つまり、買い方と造り方の両方に改善点が見つかったので、みんなで改善を実行して下さいました。すると、大きな空きスペースが生まれ、リードタイムが短縮し、それぞれの担当者の仕事が、以前と比べて明らかに楽になりました。
 
 要するに、全員がそれぞれベストを尽くしていても、それがバラバラな個別最適であっては、必ずしもベストの結果にはならないということです。
 
 しかし、全員がお互いのことを知った上で、みんなでできるベストを尽くすと、それは全体最適の本当のベストの答を導けることになるのです。
 
 さっそくこのような見方で、現場のモノに潜んだ問題点を見つけて下さい。よろしくお願いいたします。
 

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copyright ゆきち先生 http://yukichisensei.com/

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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