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税務・会計

第8回 社長が安心して経営できる預金残高はいくらですか? 

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

会社が新しいビジネスを始めたり、社員を採用したり、設備を増設したりするときに、社長が必ず確認するのが、会社の預金残高です。

何かしようするときに先立つものがなければ、実行できないからです。

一方で、業績が傾き、資金繰りが苦しいときに、気になるのも預金残高です。

御社の今の預金残高はいくらですか?

 

●会社の安全性を「手元流動性」で見る

新型コロナウイルスが招いた危機的・災厄的状況の影響で、2020年に注目された経営指標が「手元流動性」でした。

手元流動性とは、すぐに使える資金が手元にいくらあるのかを示す指標です。

計算式は次のとおりです。

 手元流動性比率 = (現金預金+短期所有有価証券) ÷ 売上高(月)

つまり、売上高の何カ月分の資金が手元にあるのかを表しています。

 

手元流動性が高い(手元資金に余裕がある)ほど、一般的に会社の安全性は高いといえます。

新型コロナウイルスの感染拡大により収入減となった業界において、手元流動性が低い中小企業から経営危機に陥っていきました。

手元の資金が乏しいよりも潤沢なほうが、倒産リスクが低いのは当然です。

ただし、手元流動性が高すぎる(余裕資金が多すぎる)と、資金を効率よく運用していないという見方もあります。

御社の手元流動性は、月商の何倍ですか?

 

●プラス思考?マイナス思考? 社長の思考は会社の預金残高に左右される

中小企業における手元流動性の平均は、だいたい売上高の1.2〜1.5倍です。

通常、毎月の売上から仕入や経費を支払い、さらに借金の返済もします。

ですから、預金残高が売上の1カ月分だけでは、資金繰りを回すのが忙しくなります。

さらに収入の柱である売上が減少すれば、毎月の給料や家賃を支払うことさえできなくなります。

 

資金に余裕がなくなると、社長はいつも金策に追われてしまいます。

すると、本来の経営を考える時間がなくなっていきます。

新規事業や新製品などプラス方向に考える資金も時間もなく、借金の返済や期限の過ぎた支払いに悩むマイナス方向に思考回路が向かっていくのです。

ある程度余裕を持って資金量を確保しておかなければ、正常な会社経営はできません。

御社の資金がいくらあれば、社長は経営に集中できますか?

 

●チャンスを逃さないためにキャッシュポジションの設定をしておく

社長であれば、安心して経営できる預金残高を常に維持したいものです。

そこで、資金量の目安として、通常の売上高(月)+余裕分の金額を決めておきます。

優良企業になるほど、この余裕分を多めに確保する傾向にあります。

売上高の2〜3カ月分の資金を常に確保してあれば、毎月の資金繰りを心配せずに経営に集中できます。

資金に余裕があると、社長の心にも余裕が生まれ、新しいアイデアを考える時間が増えます。

資金と時間に余裕あると、すぐに事業化できるので、チャンスを実現しやすくなります。

 

そのために、投資家的なキャッシュポジションの考え方を取り入れておくといいでしょう。

キャッシュポジションとは、投資資金のうち投資に回さずに手元に置いておく資金のことです。

金融経済情勢を見ながら、投資を控えるときは手元資金量を増やして様子をうかがい、チャンスが訪れたときに、すぐに投資に回せる資金を準備しておくのです。

チャンスが訪れたときにすぐ使える資金が、手元にいくらありますか?

 

●社長の覚悟が預金残高に表れる

今回突然訪れたコロナ禍において、余裕資金を確保してあった会社は、慌てずに経営を維持できました。

それに対して、ギリギリの資金で経営していた会社は、打つ手がありませんでした。

緊急時に備えて資金に余裕を持っておくことの重要性を、すべての社長が痛感させられました。

 

会社によって、最低限確保しておく預金残高の考え方はさまざまです。

「もし仕事がなくなっても雇用を維持するために、給料の半年分を確保してある」

「どんなときも新製品開発が継続できる資金を別に準備している」

「何があっても会社を守る!」という社長の覚悟が預金残高に表れています。

御社にとって、最低限維持すべき預金残高の基準は何ですか?

 

預金残高のデッドラインを切った場合に備えた危機管理をしておく

社長は毎月、「月次決算の預金残高」を見るとともに、経理からあがってくる「当月の資金繰り予定表(当月の入金予定と支払い予定)」を確認します。

できれば月初に、「最悪のケース(大口の入金が入ってこない、臨時の支出が急遽発生)」を想定しておきます。

そして、会社として死守すべき預金残高であるデッドラインを切ったら、どのような対応をするのかを経理担当者へ指示しておきます。

突然、資金ショートに陥ると、経理はパニック状態になります。

ですから、冷静に判断し対処できるように、前もって準備しておくことが必要です。

 

対策は1つだけでなく、できるだけ多く準備します。

定期預金の解約、手形割引、当座借越の利用、有価証券の売却など、あらゆる手段を洗い出しておきます。

実行する順序は、そのときの金融情勢や会社の状況によって変わりますから、毎月忘れずに見直しておきましょう。

 

会社は赤字になってもつぶれませんが、資金が底をついたら終わりです。

社長は常に最悪の事態を想定して、維持すべき預金残高とデッドラインを下回ったときの対処法について準備しておきましょう。

御社は、預金残高のデッドラインを切ったときの準備はできていますか?

 

第7回 手形の電子化を始めていますか? 前のページ

第9回 新規投資は「最悪のケース」を想定して決める 次のページ

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