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ビジネス見聞録

「展示会の見せ方・次の見どころ」(2025年6月)

ビジネス見聞録 経営ニュース

展示会出展コンセプト検討シートのナマ事例

 展示会営業(R)コンサルタントの清永健一です。

 前回のコラムでは、成果を出す展示会出展の土台になる「出展コンセプト」を練り上げる手順についてお伝えしました。

 今回は、あなたの会社が出展コンセプトを練り上げていく時の参考になるように、実例をお伝えします。ぜひ、自社に置き換えながらお読みください。

 

オーアンドケーの出展コンセプト検討シート

 実例として取り上げるのは、株式会社オーアンドケーという企業です。オーアンドケーは、愛知県にある清掃サービスの会社です。創業以来、ビルや飲食店の清掃を行っていますが、社長は、このまま同じ客層を相手にするだけでは、いずれ事業がジリ貧になると危機感を感じていました。

 そこで、新たな客層として介護施設を開拓することを決意し、福祉や健康に関する中部地区最大の健康産業展ウェルフェアに出展することにしたのです。

 出展にあたり、オーアンドケーは、社長を含む7名の展示会営業プロジェクトチームを結成しました。オーアンドケーの出展コンセプトはどのようにして固まっていったのでしょうか?見ていきましょう。

 

展示会で出会いたい人は?

 まず始めに決めるのは、「展示会で出会いたい人」でしたね。オーアンドケーの場合は、どうなるでしょうか?

 介護施設に清掃サービスを提供したいのですから、出会いたい相手は、「介護施設の経営者」です。これでよさそうですが、念のためチェックしておきましょう。

 チェックポイント1は、業種ではなくパーソン単位まで落とし込まれているかどうかです。「介護施設」とするのではなく、「介護施設の経営者」となっていますからオッケーですね。

 チェックポイントの2は、ここで設定した相手が、展示会に一定数以上来場するかどうかです。健康産業展ウェルフェアには、介護施設の経営者がたくさん来場しますから、このチェックポイントも問題ありません。

その人が心の中でつぶやいている悩みは?

 次に、考えるのは、「その人が心の中でつぶやいている悩みは?」です。

 「介護施設の経営者」が心の中でつぶやいている悩みは、何でしょうか?このことについて、話し合った時、実は、プロジェクトメンバーからは、具体的な悩みがあまり上がってきませんでした。無理もありません。

 オーアンドケーは、まさにこれから介護施設を開拓しようとしているのですから、今現在、介護施設について詳しくなくても仕方ありません。

 あなたの会社も、場合によっては、「展示会で出会いたい人」が「日ごろ心の中でつぶやいている悩み」を具体的に挙げることができないというケースがあるかもしれません。

 そんな時はどうすればよいのでしょうか?答えは簡単です。そういう時は、「相手に聞きにいく」というのが、展示会営業Ⓡノウハウにおける鉄則です。相手の悩みがわからない時に、自分たちだけで、あれこれ考えすぎてはいけません。

 それでは、単なる妄想になってしまいます。組織風土がまじめな企業ほど自社で考えすぎて妄想になってしまうケースが多いので注意してください。

 オーアンドケーも、鉄則通り、相手に聞きにいきました。ラッキーだったのは、プロジェクトメンバーのおばあ様が介護施設に入っていたため、そのツテで、介護施設の経営者にヒアリングできたことです。ヒアリングした結果、さまざまな悩みが出てきました。

・「入所者が増えないぞ」
・「スタッフがまた辞めてしまった」
・「ヤバイ!今、監査来たら対応できないぞ」
・「スタッフの人間関係が悪いんだよなぁ」
・「入所者や家族からまたクレームが・・・」
・「スタッフが採用できないなぁ」
・「ノロウイルスとかインフルがホント怖い」

 この時のチェックポイントは2つです。ひとつは、自社が解決できるかどうかは別として、その人になりきって悩みを挙げることです。

 そして、もうひとつは、前向き表現でなく、その人が心の中でつぶやいているまま、生々しく後ろ向きな言い方のままで挙げることです。

 オーアンドケーが挙げた悩みは、このふたつのチェックポイントをクリアしていますね。

 では、次に、この悩みに優先順位をつけていきます。相手になりきって優先順位を決めていきます。オーアンドケーではこのようになりました。

・優先順位1「スタッフがまた辞めてしまった」
・優先順位2「ノロウイルスとかインフルがホント怖い」
・優先順位3「スタッフが採用できないなぁ」
・優先順位4「入所者が増えないぞ」
・優先順位5「入所者や家族からまたクレームが・・・」
・優先順位6「スタッフの人間関係が悪いんだよなぁ」
・優先順位7「ヤバイ!今、監査来たら対応できないぞ」

だったら、うちが(こんな風に)役に立てますよ

 次は、この悩みに対して、「だったら、うちが(こんな風に)役に立てますよ」について考えていきます。

 優先順位の高いものから見ていきましょう。優先順位が一番高い「スタッフがまた辞めてしまった」に対してはどうでしょうか?多少にこじつければ、

 「勤務先である介護施設が清掃によって清潔に保たれれば、スタッフの定着率が上がる(かもしれない)」と言えないことはないでしょうね。でも、強引な感じもあり、若干苦しい気もします。

 続けていきましょう。優先順位が2番目の「ノロウイルスとかインフルがホント怖い」については、どうでしょうか?これは、清潔な空間を保つ清掃サービスの専門家であるオーアンドケーにとって、ずばり解決できるテーマですね。

 しかも、見込み客にとって、とても深刻な悩みです。介護施設では、高齢者が集団で生活していますから嘔吐が多く、ノロウィルスやインフルエンザは発生しやすいのです。

 でも、もし、ノロウィルスが発生してお亡くなりになってしまう方が出たりすると、事業停止になるほどのマイナスの影響が出てしまいます。

 この深刻な悩みに対してオーアンドケーは、

 「うちなら、ノロウイルスやインフルエンザが 施設内で発生しないように、できますよ。」と言えるのです。これは強力ですね。他の悩みを見ても、ここまでインパクトのある解決策を提示できそうにありません。

 どうやら、(株)オーアンドケーは、「ノロウイルスとかインフルがホント怖い」という悩みに対応していくことが、ベストのようです。

ホント?って思うでしょ。裏付けはね・・・

 さぁ、次は、いよいよ、出展コンセプト検討シートの最終工程です。最終工程は、「ホント?って思うでしょ。裏付けはね・・・」という部分を埋めていきます。

 どんな人でも「うちはこんな風にお役に立てますよ!」と言われると、「本当なのか?売りたいから言ってるだけなんじゃないのか?」という気持ちになりますね。実際に口に出して言うかどうかは別として、必ず思うはずです。

 ここでは、この疑問、懸念に答えていきます。オーアンドケーの場合は、次のようになりました。

・20年におよぶ様々な清掃ノウハウの蓄積があります。
・検査キットーで汚染物質を高感度に 測定します。
・浮遊菌を押さえる加湿器を活用します
・弊社オフィスでは、清掃と加湿器の活用でたったひとりもインフルエンザになっていません。

 さぁ、これでオーアンドケーの出展コンセプト検討シートは完成です。最後にもう一度、

  • 展示会で出会いたい相手は?」

 ↓

  • その人が日ごろ心の中でつぶやいている悩みは?」

 ↓

  • だったら、うちが(こんな風に)役に立てますよ」

 ↓

  • ホント?って思うでしょ。裏付けはね・・・」

の順に全体を見直して、論理的に無理がないか、スムーズに会話が流れるか、を確認します。この時に、おすすめなのは、他の人に説明してみることです。頭の中だけで考えるのではなく、口頭で他の人に伝えてみて、説明しづらい点がないかを検証していきましょう

 出展コンセプトの作成手順をよりリアルに理解していただけたと思います。あなたも、出展コンセプト検討シートを活用して、1ブース=1アイテム=1ターゲットの出展コンセプトを練り上げていってほしいと思います。

 次回は、出展コンセプトが完成したら、展示会プロジェクトチームのメンバーで、ぜひやってみてほしいことをお伝えします。ご期待ください。

清永 健一(きよなが けんいち)
株式会社展示会営業マーケティング 代表取締役
展示会営業Ⓡコンサルタント。中小企業診断士。奈良生まれ、東京在住。神戸大学経営学部卒業後、メガバンク系コンサルティング会社など複数の企業で手腕を発揮し、2015年に独立、株式会社展示会営業マーケティングを創業する。展示会のプロフェッショナルとして、展示会主催者や出展企業などにそのノウハウを伝えている。著書の「飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術」「中小企業のDX営業マニュアル~オンライン展示会をきっかけとした営業改革術」(ともにごま書房新社)、「仕事のゲーム化でやる気モードに変える」、「営業のゲーム化で業績を上げる」(ともに実務教育出版)はいずれもamazon部門1位を獲得。行政、公益法人、金融機関、各地の商工会議所など講演実績多数。 ホームページ:https://tenjikaieigyo.com/ 

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