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マネジメント

第121回 『弱さをも成功要因に』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

 
松下幸之助氏が亡くなられたのは、1989年4月。94歳の生涯だった。
 
亡くなられてすでに四半世紀も経過しているのに、
今なお「経営の神様」として、経済界に隠然たる影響力を持っておられる。
間違いなく、近代日本が得た最高の経営者の一人に挙げられるだろう。
 
 
94歳という長寿から、松下氏は健康に恵まれた人と錯覚されるかもしれないが、
実は氏は、その生涯を、病弱な身体と戦い抜いた人であった。
 
和歌山の長く続いた古い家柄であった松下家の、八番目の末っ子に生まれ、
兄が二人あったが、いずれも早くなくなっている。
 
氏自身も生来、身体が弱かった。
そのため、勤めに出る生活はそう長くは続けられないだろうという気持ちも、
起業の動機のひとつになったと伝えられる。
 
起業前は、大阪電灯という電気メーカーに勤めていた。
ここで、順風満帆の出世を遂げていくが、22歳で肺尖カタルで倒れる。
 
医者は、「仕事を辞め、空気の良いところで転地療養するように」と言ったが、
そんなことが許される境遇ではなかった松下青年は、
三日出勤して一日休むという《飛び石勤め》を願い出た。
 
この一日の休みに様々なことをじっくり考えたと、のちに氏は述懐している。
 
独立し最初に手掛けた商品が、改良ソケットであることは広く知られているが、
そのアイデアもこの「一日の休み」中に、ふっと頭に浮かんだものだったという。
 
その後、松下電器を世界的な企業に発展させた氏の、功績を知らぬ人はいない。
だが、その生涯が肺の持病との闘いで、
入退院の繰り返しであったことは、あまり知られていない。
 
 「健康なのはなによりだ。
  しかし、体が弱いからといって、悲しむことはない。
  弱ければ弱いなりに、それに適したやり方がある。
  いろいろと知恵を働かせる機会も生まれるし、
  それで、人に負けない立派な仕事をやる遂げることもできる」
 
…松下幸之助語録には、こんな健康に関する言葉もある。
 
人には生まれつき背負ってきた運もある。
身体が丈夫か、そうでないかもそのひとつだ。
 
 
私は、生来、丈夫なほうに生まれつき、幸運だと思っていたが、
松下氏のような栄光や僥倖に恵まれているわけではない。
 
体が弱いことイコール不運だ、不幸だと言い切ってしまうのは、
運命をなめているといわれてもしかたない。
 
「無事これ名馬」という言葉があるが、
無事であれば、すべての馬が名馬だというわけではない。
 
世の中には、「無事ではない」けれど、名馬以上の誉れ高い生き方を
する人もあることを知っておきたい。
 

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