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第52回 コロナ禍でもオフィス業務を停滞させない「経理テレワーク」

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 新型コロナウイルスの第7波の感染拡大により、日本の感染者が累計1,400万人を突破しました。
 統計的には約9人に1人が、新型コロナウイルスに感染したことになります。
 社員数が9人以上の事業所や部署では、感染者が出ていることでしょう。
 感染者が出ていなくても、家族が感染して濃厚接触者になり、社員が出勤できなくなったケースも多く出ています。

 やっかいなのは、指定された期間は自宅療養または自宅待機しなければならないことです。
 内勤中心の社員が出勤できなくなった場合はもちろんですが、経理社員が出勤できなくなった場合も業務に遅れが生じます。

 会社としては、仕入支払や、売上回収などの業務が滞らないような準備が必要です。
 そこで今回は、「経理社員のテレワーク」について説明します。

御社は、コロナの影響で経理関係の仕事が停滞していませんか?

 



【経理テレワークの整備①】ペーパーレスとハンコレスを推進する

 コロナ禍で内勤社員が出勤できずに業務が停止してしまうのは、仕事が紙とハンコを中心に回っていることが原因です。
 自宅療養または自宅待機をした経理社員に聞いてみると、次のような反応です。
 「在宅でも仕事ができれば迷惑をかけずに済んだのに」
 「仕事のことが気になっていたが、書類がないと何もできないのであきらめた」
 会社で書類を見ながら作業して、処理後の書類に押印して回さないと仕事が止まってしまうからです。経理は紙とハンコで業務を進めている限り、テレワーク・在宅勤務がしたくでもできません。

 一方で、コロナ禍をきっかけに、テレワーク・在宅勤務の環境を整備した会社では、社員の出勤自粛による業務の停滞が最小限に抑えられています。
 テレワーク・在宅勤務を実現するには、これまでの紙とハンコといったアナログ的なやり方をやめて、デジタル化してペーパーレス、ハンコレスでどこでも働けるようにします。
 紙に印刷せずに電子データで情報を共有する働き方にするだけで、仕事をする場所の制約から解放されます。
 デジタル化の成果ですが、「必要に迫られてペーパーレスとハンコレスにしたら、予想以上に業務効率が上がった」という感想を多く聞きます。
 なにより、テレワーク・在宅勤務で、「どこにいても画面で確認しながら作業できるので仕事がやりやすくなった」と社員に好評です。
 デジタル化して初めて、紙とハンコのアナログ作業の非効率さを実感したというわけです。

御社は、効率の悪い紙とハンコの仕事をいつまで続けますか?


 

【経理テレワークの整備②】クラウドサービスを利用する

 テレワーク・在宅勤務をする場合は、本来、自宅の個人のパソコンで仕事をするわけにはいきません。ですから、専用のパソコンを会社から社員へ貸し出します。
 自宅などの社外から社内ネットワークに接続するために、VPN(Virtual Private Network 仮想プライベートネットワーク)やVDI(Virtual Desktop Infrastructure 仮想デスクトップインフラ)といった設定をして、セキュリティ上のガードをしておくのが一般的です。

 中小企業では、貸し出し用パソコンの準備や、厳重なネットワークの設定などが難しい場合も多いでしょう。そのようなときには、クラウドサービスを利用するのがお勧めです。
 最近では、経費精算や、業者請求書の支払、売上請求書の発行や回収管理、会計仕訳などのクラウドサービスが普及しています。
 それぞれの業務をインターネットに接続して処理するため、データをパソコンに保存せずに、クラウド上で保存管理できます。
 しかもパソコンではなく、タブレット端末やスマートフォンでも仕事ができます。
 インターネットに接続できれば、どこにいても仕事ができるので大変に便利です。

御社には、どのような経理テレワーク環境が適していますか?

 


【経理テレワークの整備③】テレワークの推進は、‶できる範囲”から‶段階的に”進める

 業務を一気にテレワーク・在宅勤務に対応させようとすると、準備や移行作業がとても大変になります。
 最初から、完璧なテレワーク環境を整備する必要はありません。できる範囲から、段階的に進めていけばいいでしょう。
 ハードウェアやソフトウェアの費用があまりかからないクラウドサービスなどを活用しながら、段階的にデジタル化を進めていくといいでしょう。

 経理業務では、日常的な経費精算や請求書の支払申請など、社内で他部門と情報を共有する部分からデジタル化していくことをおすすめします。
 申請する社員も、受けつける経理社員も、テレワーク・在宅勤務で作業ができます。常にオンライン画面で処理の状態を相互に確認できるので、業務が停滞しません。

 また逆に、銀行取引は不正送金などの恐れがあるので、テレワーク・在宅勤務ではやらせないという会社も少なくありません。
 インターネットバンキングは、フィッシング詐欺などのトラブルに巻き込まれる可能性もあるため、利用環境を限定しておいたほうがリスクを減らせるからです。

 経理部門だけでなく、内勤社員のテレワーク・在宅勤務は、まず業務範囲を限定して社内の情報共有から始めます。利用状況に応じて徐々に業務範囲を広げていってください。

御社で、次にテレワークできそうな業務は何ですか?

 



「経理テレワーク」を整備して、業務停滞を防ぐ

  今回は、経理社員のテレワーク環境の整備について説明しました。

  やるべきことは、基本的に次の3つです。

 【経理テレワークの整備①】 ペーパーレスとハンコレスの推進
 【経理テレワークの整備②】 クラウドサービスを利用したテレワーク環境の整備
 【経理テレワークの整備③】テレワークの業務範囲の選定

 社長としては、コロナ禍でもできるだけ業務を止めないようにしなければなりません。
 コロナ禍が収束するのを待っているだけではなく、社員が出勤できない状況でも、業務が継続できる最低限の環境を整備しておく必要があります。
 資金面で難しい場合は、IT導入補助金などの利用も検討しましょう。

*第45回のコラムで[中小企業の経理DXは「IT導入補助金」を活用する|新設「デジタル化基盤導入枠」]を解説しました。こちらも参考にしてください。
https://plus.jmca.jp/kodama/kodama-045-2205.html

 最後に、テレワークをスムースに推進するためのヒントをお伝えします。
 テレワーク・在宅勤務の導入担当者には、若手社員に担当させた会社ほど早く実現している傾向があります。
 進捗状況を見ていると、40~50代の管理職に任せた会社は進み方が遅いようです。デジタル化や新しい技術の導入は、若い世代のほうが積極的で、行動が速いからです。

御社のテレワークが進まない原因は何ですか?


(参考)
新型コロナウイルス感染症について[国内の発生状況など](厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1

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