オーナー会社の場合、会社単体のバランスシートだけでは本当の実態がわからないため、オーナー個人のバランスシートと会社のバランスシートの合算、すなわち連結バランスシートを作成した方がいいことを言っています。
オーナー会社の多い中小企業の場合のバランスシートは、連結バランスシートこそが本当の会計情報になるからです。
何度もお話ししていますが、中小企業は誰が守ってくれますか?
銀行が貴方の会社を守ってくれますか?
国が守ってくれますか?
社員が守ってくれますか?
家族が守ってくれますか?
残念ながらすべてNOです。本当に会社を守ることができるのはただ一人。それは社長だけです。
では、中小企業の社長はどのようにして会社を自分で守っていけばいいものなのでしょうか?また、自分を守っていけばいいものなのでしょうか?
その解答の一つが「連結バランスシート」なのです。
会社はオーナー社長にとって分身です。分身を生かすも殺すも社長次第です。
社長と会社は、平穏時であれば、一心同体となって活動していることでしょう。そして、社長は自分の会社の資産や負債を自分のものとして考えていることでしょう。
このことは会社を食い物にしているという意味ではありません。
確かに資産だけ自分のものと考えることは間違っていますが、個人的には借金がゼロでも会社に借入があれば、いつなんどき、自分が返済しなければならなくなるか、そう考えているはずです。
これも社長と会社が一心同体であることの表れです。
しかし、残念ながらほとんどの社長が、漠然と考えているだけです。
ここでは、多くの社長に、社長個人と会社のバランスシートを合算して活用する「連結バランスシート経営」をすすめるものですが、じつはこの「連結バランスシート」こそが、社長にとって重要な情報なのです。
ご承知のとおり、オーナー会社の場合、会社だけでは本当の実態を判断できない事情があります。
たとえば、会社の借入のために社長個人が保証人となり、社長個人の不動産を担保にすることは今でも常識となっています。また、会社と社長との金銭的な貸し借りもあることでしょう。
会社では借入れができないため、社長個人が借入れをして会社に資金を提供することもあるでしょう。
また、社長個人の事情で、会社から資金を拝借することもあると思います。
要するに、100%とは言いませんが、会社のお金の実権を握っているのは社長です。
ときには経理担当者が反対しても、資金移動を押し切ることもあるでしょう。もちろん、その是非は、その状況で判断しなければなりません。
つまり間違いなく、社長と会社は一心同体状態なのです。これが実態です。
一方、会計情報は企業の実態をあらわしてこそ、その価値を見出すことができるものです。
その意味でも、会社単体だけで見るのではなく、社長の資産と負債、つまり社長のバランスシートを会社のバランスシートと合算させた会計情報で判断した方がよりいいことは明白なのです。
これが、社長に連結バランスシート経営をお勧めする一つ目の理由です。
連結バランスシートを作成した場合は、資本金と社長の会社への投資、社長と会社との貸し借りは相殺されますので、なにも変わらないことになります。
中小企業の場合、貸付金は厄介な存在です。社長への貸付金は、連結バランスシートを作成しますと、相殺されますので問題ないと考えます。
社長以外の第三者に貸し付けた場合はどうでしょうか。
結局、調達した資金を事業に使っていないことになります。また、大抵、この手の貸付金は返済されません。ということは、貸付金の減少つまり返済があったということは、社長や会社の周りで誰かと何かがあったことを物語っています。
領収書をもらえない相手に支払った仮払金は、会社で計上しないようにするためには次のようにすべきです。
連結バランスシート経営においては、社長と会社との資金移動は、度を越さなければ容認します。
領収書を発行できない相手に対してお金を渡す場合は、一度、会社から社長にお金を貸します。そのお金を社長は個人のポケットマネーで渡します。
連結バランスシート経営では、中小企業の本当の会計情報は連結バランスシートなので、そこには、この手の数字は掲載されないため、OKになります。
貸付金も同様です。
社長以外の貸付金は問題視されます。中小企業は大企業と異なり、従業員に対する貸付制度はありません。
中小企業の本当の会計情報は社長と会社の連結バランスシートなのです。
会社のバランスシートが債務超過でも社長のバランスシートの状態がいい場合は、連結バランスシートは大丈夫です。
だから、社長個人のバランスシートの状態はとても大事なのです。