先回のコラム
(282号)でT社パートタイマーのMさんの事例を挙げて、働く人が楽になって、その結果会社経営が良くなって、だからみんなが楽しくなって…という、「幸せ中心、楽中心で評価する」改善をご紹介しました。
そこで今回は、「幸せ中心、楽中心で評価する」改善の具体的な方法を詳述します。
まず重要なことは、「幸せ中心、楽中心で評価する」改善は、「自分で実行した改善を報告する仕組み」ということです。
改善提案制度は会社によってずいぶんばらつきがあり、「提案」といっても、実際にはすでに実行された改善を後から提案として提出する「後出し提案」を認めている会社も多いので、そういう仕組みと似ています。要するに、「まだ実行されていない改善を提案する仕組み」ではありません。
そして、次に重要なのは、『マネ』を認めるというか、推奨するというか、ガンガン後押しするというところが大きな特長です。私はこの制度を指導先の現場で説明するとき、「マネあり、メンテナンスあり、何でもあり。チョコレートとあんこが一緒になったとても甘い制度ですから、みんなどんどん出してね!」などと言っています。
ちなみに、この改善提案の制度を「チョコ案」と名付けてあります。名前のとおり、チョコ案は、社員全員が毎月一件、どんなことでもいいので改善を実行して、その内容を簡単に紙に書いて提出していただきます。
「どんなことでもいい」ので、すでに別の人が実行している改善のマネでもいいし、あるいは剥がれたり汚れて見えなくなった棚のテプラ表示を作り替えるといったメンテナンスも、立派にチョコ案として認めます。
なぜチョコのように甘い制度にしているかというと、もし毎月自分で独自の改善を考える制度では、とても続かないからです。私も2,3か月で音を上げてしまうでしょう。
しかし、既存のネタをマネしていいなら継続は難しくありませんね。私たちは「良いことは積極的にまねよう!」と口にすることは多いのですが、実際に誰かが改善したことをまねるとなると、「勝手にまねるわけにはいかないし、だからと言って許可をもらいに行くというのも何か変だし…」などと考えてしまいます。要はまねるということに少なからず抵抗感・罪悪感を持ってしまう気持ちがあるのだと思います。
しかし、もし、とても素晴らしいことをAさんが思いついて改善したとして、それをBさんからZさんまでの残りの25人がマネしたとしたら、26人全員がその素晴らしいやり方を実行できることになり、会社は一瞬にして品質や生産性を上げることができるでしょう。
こういうことを、会社の上司が、25人に指示・命令することできちんと素早く実行に移せるでしょうか?
簡単ではないと思います。しかし全員に集まってもらって、「Aさんがすごくいいやり方を発明しました。今月のチョコ案は全員がAさんのやり方をマネて実行することで提出してください。全員チョコ案一件ゲーット!」とアナウンスすることで、みんなが喜んで実行してくれるのではないでしょうか。
その時、Aさんのチョコ案用紙には
【改善前】やりにくかった。
【改善後】やりやすくなった。
と書かれていればよく、
BさんからZさんまでの用紙には
【改善前】やりにくかった。
【改善後】Aさんのやり方をまねた。
と書けばいいのです。
これだけでは何だか分からないということがあっても、実行済改善ですから、現場に行って見ればすぐ分かります。
T社では140人の方々が働いていらっしゃいますが、全員が改善を実行し、その内容を報告しています。下の写真は2か月前に撮った二年連続全員実行のポスターです。現在ももちろん継続中です。