と言われたらどうしますか?中堅企業以上の規模の会社には人事部があるため、
対応法も分かっていることが多いのですが、人事部のない企業だと社長が対応せざるを得なかったり、知識のない事務系の社員が対応することになります。
良かれと思ってやったことによって泥沼化して問題が悪化してしまうことも多々あります。
そこで今回はハラスメント全般の基本となる対処法をお伝えします。
ハラスメント対応5つの流れ
職場で起きる主要なハラスメントはパワハラ、セクハラ、マタハラ、モラハラの4つです。
それぞれ定義は異なりますが、対応については共通している点が多いです。
シンプルにすると下記のような5つの流れになります。
ハラスメントを受けている人を相談者、ハラスメントをしている人を行為者、相談者と行為者と同じ職場で働く人を第三者と定義しておきます。
②初動のヒアリング(相談者)
③検討
④検証のヒアリング(相談者、行為者、第三者)
⑤処分・対応
具体的にどのようなことをするのか、そして注意点を伝えていきます。
①相談の受付
ハラスメントを受けた社員から相談がきた状況です。ある程度の規模の会社だと
相談窓口がありますが、社員数30名以下の企業ですと窓口はないのが実情です。
その場合、直接社長に話がくることもありますし、総務担当に話がくることになります。
電話でくることはほとんどなく、メールでくることが多いです。メールで「相談したいことがあるのでお時間いただけますか」とくる場合とメールに相談内容が書かれている場合に分かれます。メールで詳細が書かれていたとしても相談者から直接話を聞かないと分からないことが多いので、この段階でハラスメントかどうかを判断せず、必ずヒアリングの場を設定してください。
②初動のヒアリング(相談者)
ハラスメント対応で最も重要なのはプライバシーの保護です。
なるべく他の社員に知られないように配慮をすることが大事です。
密室の会議室、場合によっては社外で就業時間内に行った方が良いと思いますが、状況によっては就業時間後でもかまいません。
気分を和らげるために夜にお酒を飲みながらやろうとする人がいますが、これは愚の骨頂ですので絶対にやらない方が良いです。
ヒアリングするのは、いつから、誰から、どのようなことをされているか、本人の要望になります。この場でハラスメントの認定をせず、いったん持ち帰ってから判断します。
相談者からの話だけで行為者を処分することはできません。
相談者が自分に都合の良いことばかり言っていることもあり、事実と違っていることもあるからです。ここでは相談者を取り巻く相関図を描き、相談者、行為者の様子を知って良そうな第三者まで明確にしておきます。
④検証のヒアリング(相談者、行為者、第三者)
相談者に確認しないで勝手に行為者にヒアリングをすると、「社長にチクったな」と報復行為をされる恐れもあり、こうなってしまうと会社側の責も問われ、問題は大きくなり泥沼化します。行為者に話を聞いても判断が難しい場合は、相談者と行為者の状況を知っていそうな第三者に確認をすることとなります。この場合も相談者に了承を得ることが必要です。
⑤処分・対応
会社側で決定した結論を相談者に伝え、この処分をもって終了を伝えます。
行為者には処分内容を伝えます。
以上のように①~⑤がハラスメントの基本対応の流れになります。
実際のところそれぞれの案件によって個別対応とならざるを得ないのがこの問題の難しいところです。対応の流れは抑えつつ、実情にあった対応をすることになってくると思います。
セクハラやパワハラが起きた場合、原則として行為者を相談者から離す、つまり異動させるということが発生しますが、いろいろな部署がある大企業ならまだしも、中小企業では部署異動が難しいということは多々あります。自社ができる範囲で対応していけば良いでしょう。
ハラスメント対応で重要なのは信頼関係
これらの対処法の前に必要な1つのことは、信頼関係の構築にあります。
相談者から信頼されていないと良かれと思ってやったことでも裏目に出てしまったり、こじれてしまうことになる場合があります。
信頼関係を築くのに基本となるのは、親身になって話を聴くということです。
難しいテクニックではなく、誰もが分かっていることだと思いますが、たとえ相談者が問題ありそうな人であったとしても親身になって話を聴くというのはやってみると意外と難しく感じると思います。
先入観が入って
「それはパワハラではないし、そもそもお前が悪いんだろ?」
「セクハラ?それ勘違いじゃないの?意識し過ぎなんだよ」
というスタンスで対応すると不思議と相手にも伝わります。
実際に私がある会社のハラスメント対応に関与した時に、企業の担当者の方が
「この人、職場で評価も低く、評判が悪いんですよ。今回の件もパワハラというのは勘違いだと思いますよ。」
と言っていて、そのような雰囲気で接しているのが本人にも伝わっていたようで少し荒れた展開になってきました。
途中で私がフラットな立ち位置で聞き手に回り、その場は収めましたが、あのまま進んだら別の問題に発展しただろうと思います。
その人に日頃の素性を知っているがゆえに先入観や偏見が入ってしまうのはやむを得ないと思いますが、相対している時間だけはそれを出さないようにすることが重要となります。
信頼関係ができていると、本人の要望にそえないことがあっても、「そこまでやってくれたのだから仕方ないですね。分かりました。」と理解を示してくれることがある一方で、
信頼関係がないと「何でできないんですか?困ります」ということにもなることがあります。
信頼関係ができるかどうかはほぼ初動で決まってくるので、初動では対応する人の立ち居振る舞い、言動は注意が必要です。
ハラスメント対応で最も難しいのは、先入観を持たずにフラットなスタンスで取り組むということかもしれません。