スシローグローバルホールディングスの勢いが止まらない。同社の好調さは、回転ずし業界のみならず、外食産業全体を見渡しても、他を圧倒する好調さである。過去4年間の年平均増収率は10.0%、営業増益率は20.5%となっている。
この業績好調を裏付けるものは、既存店伸び率の好調である。回転ずし業界は2017年の半ばにSNSでアニサキス問題が話題となってマイナスに落ち込んだことがあったが、同社もその影響を受けて2017年10月まで半年間、既存店がマイナスで推移した。しかし、その後2017年11月から2019年12月まで26カ月間連続で既存店プラスを維持している。しかも、2018年度(2017年10月から2018年9月)は4.4%増、2019年度は7.4%増とかなり高水準の既存店伸び率である。
同社の既存店が好調な背景は、原価率を高めに設定して、商品のお値打ち感を出し、客数の増加で稼ぐという戦略が功を奏しているものである。ただし、商品ごとに原価率が異なるため、会社側の意図とは関係なく同社にとって儲かる商品が余計に売れて原価率が下がることもある。2019年3月期上期にはそのようなことで原価率が0.4%pt低下し、14.0%増収ながら33.0%営業増益と大幅な増益となった。そこで、下期には原料や価格を見直して原価率を上げる施策を打った。その結果、原価率は0.4%pt上昇したが、13.7%増収15.4%営業増益と好業績を維持している。
現在、国内では圧勝している同社であるが、いよいよその価格対比のクオリティを持って海外に本格進出することにした。すでに多くの寿司店、回転ずし店が海外展開する中で、意外ではあるがこれまでの同社の海外進出は打診の域を出なかった。しかし、今期から本格的に海外展開を加速することにしている。
2018年度末(2018年9月)には韓国に10店舗、台湾に2店舗だけであったが、2019年度に韓国4、台湾7、香港1、シンガポール1と計13店舗を出店し、年度末の店舗数は一気に25店舗と倍増した。同社の国内店舗はインバウンドにも大人気で、海外への出店店舗のメニューはほぼ国内と同じものであるが、オープン後は各店舗とも大盛況の様子である。
そこで、同社では今年度の海外出店を22-26店舗とさらに倍増する計画である。経済情勢や政治情勢を考慮して、その半分は台湾への出店を見込んでいる。国内でも出店を行うが、今期末の海外店舗のウエイトは一気に7%ほどに上昇する見込みである。海外店舗では各店舗、国内の繁盛店並みの売上となる模様であり、現状では利益のインパクトはまだ小さいが、1-2年で同社業績への貢献度も急速に高まる可能性があろう。
有賀の眼
同社では、海外展開への注力に歩調を合わせるように、2020年10月20日から2021年4月10日に開催されるドバイ万博の日本館において、回転ずし店を出店することにした。万博店舗の座席数は92席で、100種類以上のメニューでハラールへの対応も行うということである。当然これ自体はテンポラリーの店舗であり、収益への寄与は期待できず、広告宣伝費的な位置づけになろう。しかし、全世界から訪れる人が同社の回転ずしに舌鼓を打つことになる。この万博への出店はまさに同社の経営力、政治力の賜物なのではないかと感心するところである。
日本の寿司はすでにかなり以前から海外で受け入れられ、さらに通常の寿司も回転ずしも海外で独自の発展を遂げている面もある。それに対して同社では、発祥の地の本場日本で究極まで磨き上げられた回転ずしのクオリティで、独自の文化として発展する海外市場に勝負を挑もうというものである。自国で回転ずしに馴染んでいるはずの海外からのインバウンドも、同社の店舗において改めて本場の本物の回転ずしに感動して帰るという話も聞く。最も大衆的な回転ずしという業態で、日本食の醍醐味を広く世界に知らしめるという意味でも、今後の同社の海外展開からは目が離せないものではなかろうか。