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人間学・古典

第14講 「言志四録その14」
鋭進の工夫はもとより易からず。退歩の工夫はもっとも難し。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学

【意味】
進む工夫は生易しくはない。退く工夫は更に難しい。


【解説】
命の与奪権を天地自然の神に委ね、与えられた命を出発点とし、奪われる命を終着点とする・・・
これが我々人間の誰もが歩む人生の路です。
この人生行路に、どのレベルの我が生き方(命)を乗せて運ぶかとなります。これが運命です。

運命には「天与の領域」と「自己の領域」があります。
前者は男女の区別、生まれた国や時代など・・・いかんともしがたい領域です。
後者は自分の意思や努力に影響され、ある程度は自分で選択できる領域になります。
実はこの自己の領域の生き方を学ぶのが人間学であり、学び方次第で人生に大きな差が生ずるのです。
鋭進の工夫も退歩の工夫もこの領域に含まれます。


東洋思想では「出処進退」を大切にします。
出処とは出る処であり、進退とは進んで退くことですが、進退の方が難しいと言われます。

社長の悩みは、後継者の育成とバトンタッチのタイミングです。
創業者のケースを除きますと社長の就任は、自らの意志よりも他からの力が大きく働きます。
逆に引退のタイミングは、既に大きな権限もあり実績もありますから、これらが自信過剰を産み、
自らの判断でしなければならない退任時期を誤らせることになります。
更に時としてこの退任の後れが、充分に育っている後継者の就任の時期をつぶすことになりかねません。


陸上のリレー競技でもそうですが、バトンを受ける側が元気溌剌であるのに対して、渡す側は
それまで自分の担当距離をしっかり走ってきたわけですから、後は失速するばかりの状態です。
400メートルを一人で走るより、100メートルずつ4人でリレーする方が早いのは、失速する前に次走へ
バトンが渡っているからです。つまり順調な出処進退が行われているという企業は絶えず活気があることになります。


順調な人でも無常の風は避け切れず、誰もが確実に年を取ります。
高く揚がった凧ほど降ろすのが難しいように、大きな成功を治めた人ほど引退の勇気は大きなものが必要とされます。
成功者には過去の栄光があり自己の能力も過信しています。
しかし天地自然の摂理によって誰の晩年でも一律に体力も判断力も衰えてゼロの状態に至ります。
高い栄光からゼロまでの大きな落差に耐える勇気が必要になります。

史上稀に見る天下の寵児であった秀吉も、晩年の引き際の勇気を持てなかった1人です。
気の毒にも我が子秀頼を守るためにあがき苦しんで死んでいきました。
1人で占めた余りある天下の財宝もたった一人の秀吉の心を救えなかったのです。
もし彼が水飲み百姓の倅であると卑下せずに、少しでも人間学を学んで余命の日々の生き方を学んでいたら、
日本の歴史は変わっていたかもしれません。

杉山巌海

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