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人間学・古典

第7講 「言志四録その7」
一燈を提げて暗夜を行く。 暗夜を憂うること勿れ、只一燈を頼め。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学

【意味】
提灯を掲げて暗い夜道を歩む。夜道の暗さ(自分の置かれている厳しい状況)を嘆き悲しむな。
只ひたすらに提灯の一燈(僅かな可能性)を信じて迷わず進め。



【解説】
天下の名医にかかっていても病状が長引くと、患者の心は迷い弱くなります。
この迷いによって、折角得た名医を捨て他の医者を求めて転々としたり、
最後には怪しげな加持祈祷や何百万円もする壷を買ったりする破目になります。

人の心は一旦迷いだすと「弱さや迷いの連鎖反応」を起こします。
一度病んでしまった心はなかなか元には戻りません。


「一燈を提げて暗夜を行く」とあります。
『暗夜』とは真っ暗で先の様子が把握できない状況ですから、当事者にとってかなりの窮地に追い込まれた状況です。
人はピンチを迎えると、誰もが不安を感じ心を乱しがちになります。心が乱れると弱気になり迷いが生じます。
一方、『一燈』とは孤立する暗夜の中で自分が頼りにできる僅かな灯りです。救いの可能性のある最後の命綱です。

当事者以外の者が考えれば、その最後の命綱に全精力を注ぎ込むのが当たり前のことですが、窮地にいて冷静な
判断のできなくなった者は、慌てふためき命綱を手放すどころか、とんでもない選択をすることもしばしばです。
先にも挙げた高価な壷の購入などは、この典型的な例です。


ならば、このようなピンチにどう対応するか?その対応を教えてくれるのがこの句の真髄です。
「暗夜を憂うること勿れ」とは、窮地にある現在の境遇を嘆き悲しむなということです。
嘆き哀しんで悲劇のヒロインを演じるほど、救いのナイトを求める救済幻想が心の底で強くなります。
これは、自らの自立心を失うことになりますから、益々弱気や迷いが増徴し、確実に自滅の方向に進みます。

ですから救済幻想に頼るよりも現実的な命綱である提灯の明かりを頼りにし、
可能性が少ないからこそ一心不乱に心を注ぐ事が大切になります。
これが、「只一燈を頼め」ということです。
心を弱くして万に一つも無い妄想に騙され右往左往することなく、
きっぱりと迷いを捨て、必ずやり抜くという心で前に進めということです。


私の恩師の飯塚毅先生(TKC全国会の創始者)は、よく「ピンチの時の退路遮断」を説かれました。
弱気になった時こそ自ら我が逃げ道を塞げという教えです。
よく考えてみれば一斎先生も飯塚先生も同じ教えを説かれていることになります。
あえて両者を比較すれば、一斎先生は学者ですから「只一燈を頼め」という未来心に力点を置く正攻法です。
飯塚先生は社会正義を実現する為に幾多の修羅場を乗り越えてきた実戦経験豊かな職業会計人ですから、
「即刻只今を以て退路を遮断せよ」という経験を踏まえた実践法になるのでしょう。


この句を見るたび、いかにも版画などに取り上げられそうな昔の暗夜の構図がはっきりと目に浮かびます。
情景が浮かぶ楽しい句という意味では、言志四録1133条の中でも指折りのものだと思います。
皆さんはどう思われるでしょうか?

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