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健康

第5号 「”わからない”は肝臓を傷める~脂肪肝のココロ~」

おのころ心平の ──社長のための「か・ら・だマネジメント」

 わたくし、脂肪肝です。

 最近、メタボの元凶などと呼ばれており、せつない限りです。

 脂肪肝というと、何だか肝臓の表面にべったりまとわりついた脂肪をイメージされる方が多いかもしれませんが、それは間違いです。

 肝臓というのは、成人だと約2500~3000億個の肝臓細胞で構成されています。

 1個の肝臓細胞さんの内部には、核があり、細胞小器官があり・・・。つまり、肝臓細胞さんも肝臓という枠組のなかで、一生懸命その生を営んでおります。

 肝臓にぎっしりとつまった肝臓細胞さんたち。

 ところがその中に、細胞内部にたっぷりと「脂肪」を溜め込んだ細胞が出てきます。顕微鏡などで肝臓断面の様子をみてみると、まるで滴(しずく)のように見える細胞があります。なので、これを脂肪滴と呼ぶそうです。

 わたくし脂肪肝とは、この「脂肪滴」がたくさん増えて、肝臓さん全体の30%を超えた状態を言うのです。

 ではなぜ、この肝臓に脂肪が溜まってしまうのでしょうか?

 その辺を説明するために、ちょっと肝臓への血液の流れから見ていただきましょうか。

ono5-1.jpg 肝臓には、ほかの臓器さんと違って、動脈血・静脈血のほか、「門脈血」という特殊な血液が流れ込んできます。
 心臓から押し出された動脈血は、胃、小腸、大腸といった消化器系にも注ぐのですが、その血液は、消化管で吸収された食べ物とまざって「門脈血」となります。

 胃や小腸でこまかーくなって吸収された栄養物は、胃腸に送られてきた動脈血に溶け込んで、それはいったん全部が肝臓へと送られていくのです。これもすごいことですね。肝臓さんは、消化管の血液をすべて引き受けるんですから。

 門脈血は、肝臓に行くとその内部でさまざまに加工され、ブドウ糖とかミネラル、ビタミンとかに仕分けされて貯蔵されます。また不必要なものは、「解毒」作用を受けて、胆嚢から腸へと戻されます。

 この過程のなかで、わたくし脂肪肝は、いったいどんな役割をするのかと言うと…。

 まず、脂肪というのは、実はなかなかに重要な働きをしております。ホルモンの材料となったり、細胞の膜をつくったりする保護作用などもしているんです。

 皮下脂肪なども敵視されることが多いのですが、保温効果や、溜まってしまった金属毒素などをコーティングして、その害を最小限にとどめるというようなこともやっているのですよ。

 つまり、その脂肪が肝臓に溜まってしまうということは、肝臓にとって害になる毒素をコーティングして肝臓を守っている、とも見ることができるのです。

 そのままにしておいてはキケンな毒素を脂肪でコーティングしていった結果、その毒素が多いだけ、わたくし「脂肪肝」が進んでしまうというしくみです。

 そりゃあ、わたくしだって、不必要に肝臓に居座ることは本意ではありません。解毒作用がきちんと働いていただける限り、わたくしの出番がそんなに多いはずはないのです。

 ただ、肝臓さんは、次から次へと送られてくる門脈血を分解し、代謝し、どんどん仕分けしなければならないので、とにかく忙しいのです。

 それに仕分け作業に必要なのは、相手をしっかり「理解する」ことですから、たとえキケンな毒だとしても、肝臓は丁寧に、まず相手を理解しようとします。

 肝臓さんに必要なのは、「相手をわかろうとする気持ち」と、その心理的「余裕」なのです。

 しかしながら、休む間もなく働いて仕分け作業が鈍ってくると、肝臓さんも、ちょっとこれは後で仕分けしよう、ということになりますよね。その梱包財として「脂肪」が必要となるわけです。

 脂肪で固めて置いておくというのは、借金みたいなもんで、いずれはそれに面と向き合わないといけないのですが、毎月の利子を払うので精一杯などという状況が続くと、とても元本を返すような余裕は生まれません。

 そこで、もうご破算だ!ということで、カラダは、肝炎などを起こしてしまいます。

 肝臓に炎症を起こす引き金は、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスなど言われています。ただ、「ウイルスそのものが、肝臓に炎症を起こすわけではない」ということを知っていただきたいのです。

 これは炎症一般に言えることですけど、炎症とは、免疫細胞さんたちによる波状攻撃によって起こります。

 毒素を溜め込んでしまった肝臓細胞、ウイルスに感染してしまった肝臓細胞…。ウイルスが肝臓細胞さんの内部に入り込んでしまうと、免疫はウイルスだけを攻撃できないので、肝臓細胞まるごとを破壊しようとします。

 肝臓さんはご存知のように再生能力の高い臓器です。免疫細胞たちさんも、その潜在能力を信頼して、多少の攻撃は肝臓さんのもつ再生能力がカバーしてくれると思って、徐々に攻撃力を高めていきます。

 徐々に強力化する免疫と、それに対抗すべく防御力を高めるウイルス。

 このイタチごっこが続くと、肝臓細胞さんの異常な新陳代謝が促進されます。ぶすぶすと、不完全燃焼的に続く炎症。これが慢性肝炎なんですね。そして、それはやっかいなことに、やがて肝硬変へと移行していきます。

 肝臓さんが硬く変わってしまう、と書いて「肝硬変」ですが、肝臓細胞さんのあいまには、結合組織というクッション組織があるのです。繰り返される炎症で、このクッション組織が「かさぶた」のように厚く硬くなってしまいます。

 肝臓細胞さんの間の結合組織が肥大すると、肝臓内部における連絡や血液の供給が不自由になりますよね。解毒機能が本領の肝臓さんに、たくさんの汚れや毒素が溜まってしまって、結果、がんが発生しやすくなってしまうというわけです。

 でも、肝炎だって、わざわざウイルスを呼び込んでまで、溜まった毒素を燃焼しようという、われわれの、肝臓を守るためのギリギリの戦略と見ていただけるととても助かります。

 わたしたちはなんとかして肝臓を守りたい。理解したい肝臓にとって、「わからない」は、最大の敵と覚えてくださいね。

 そういえば、食養生の顔観察には、「眉間に縦じわが入るのは、肝臓に脂肪が溜まっている証拠と見る」と聞いたことがあります。

 眉間にしわが寄っているときというのは、なんだか小難しいことを考えていますよね。余裕がないので、相手を寄せ付けないオーラが出ています。

 そんなとき、カラダの中で、肝臓が、もうわかならい!わかりたくない!というサインを出している証拠と思ってみてください。そして、肝臓さんに、ぜひお休みと、睡眠と、余裕とを与えてあげてほしいのです。

 それがわたくし、脂肪肝の切なる願いです。

 
 ※おのころ心平氏に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。
  Q&A形式で、このコラムにて回答させていただきます。なお、重篤な疾患など
  コラムで取り上げにくい内容は、個別での回答とさせていただきますので、ご了承ください。
  質問あて先メールアドレス(担当:高橋)/etsuko@jmca.net 

 

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