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税務・会計

第1号 社長は会社を守り抜けるか

会社を守り抜くための緊急対策

 中小企業は誰も守ってくれません。だから、本気で書きます。そして経験していないことは書きません。現場で起こっていることを書きます。消費税増税をキッカケに、さらに経営が苦しくなるところが増えそうです。また中小企業金融円滑化法が平成25年3月31日に終了し、今後、資金繰りが悪化する中小企業も増えることになります。しかし、中小企業は、誰も守ってくれません。社長自らが守り抜くしかないのです。

◆中小企業の実情
 さまざまな制度があっても、中小企業はなかなかそれを活用できません。だからこそ、社長自らが会社を守り抜いていかなければならないのです。
 中小企業は社会保険に加入したくてもなかなかできません。実情を知らない人は、社会保険料は、会社と従業員が折半だから大丈夫ではないかと話をしますが、的外れな話なのです。
 例えば、給与20万円の人に対して、仮に所得税2万円と社会保険料の従業員負担分2万円としますと、会社は16万円の資金しか手当をしません。まず、この16万円を何とか工面します。そして4万円は、経理上、預り金として処理します。
 20万円を一度、従業員に全額支出し、4万円を本当に預かるのであれば、20万円の資金を工面することになりますが、実際は16万円の工面になります。
 そうなのです。4万円を預かっているという感覚はありません。そして、4万円と会社負担分の2万円の合計6万円を納付することになりますが、その資金が手当てできない会社が多いのです。
 このように考えたとき、会社は折半ではなく、全額、負担しているという感覚なのです。これが中小企業の実態です。
 また、セーフティネットに加入したくても掛金が支払えません。中小企業は、数百万円ではなく、数万円、時に数千円がなく、困っているのです。掛金が安いからといって、それすら支払うことが出来ません。
 さらに、税金を滞納すれば、3ヶ月目から延滞税が高利の14.6%に跳ね上がります。それがイヤなら、安い金利で借りて納めればいいと当局は簡単に話しますが、低金利で借りられるなら苦労はしないのが中小企業なのです。そして差押されれば一巻の終わりです。
 金融機関から借入れをして、中小企業金融円滑化法の恩恵を受けて返済の凍結をしてもらっている会社もあることでしょう。円滑化法終了後は倒産が増加するといわれていましたが、実際は、倒産件数が減少しました。
 これは景気が良くなったからではありません。倒産できない会社が増加しているのです。
 一体どういうことでしょうか。
 円滑化法終了後、すぐに金融機関が行動に出れば、つまり、凍結解除して返済を求めていけば、間違いなく倒産件数は増加します。そうなれば、消費税増税時期に影響が出るのは必至です。10%は財務省の悲願です。そして金融機関の監督官庁は財務省です。
 一見、紳士的な態度に見えますが、消費税増税の時期が正式に決まるまでは動けないのです。しかし、既に、金融機関は半年前から、企業の選別に入っています。
 あとはいつ行動するかです。行動とは、貸金の引き揚げです。そうなれば、延命措置で返済凍結した会社は、倒産にまっしぐらになることでしょう。

◆銀行が喉から手が出るほど欲しい情報
 そのような中小企業は、潰れてもいいと簡単に言えるものでしょうか。
 確かに、業績が悪く、資金繰りが悪化している会社は、これまでいろいろな原因があったのかもしれません。中には、素行の悪い会社もあるのかもしれません。
 しかし、地域に必要な事業であれば、どんなに厳しくても、お客様のために続けていくことが使命だと思っている社長も多いのです。ことはそんなに簡単ではありません。数字だけで判断することは出来ないのです。
 しかし、悲しいかな、中小企業は誰も守ってくれません。社長自身が守るしかないのです。そのために必要な情報はもちろん存在します。それは、銀行が喉から手が出るほど欲しい情報です。
 この情報こそが、社長と会社のバランスシートを合算させる『連結バランスシート』なのです。
 ところで中小企業の一番身近にいるといわれている会計事務所(公認会計士や税理士)は本当に、皆さんの会社を守ってくれているでしょうか。
 先ほどの中小企業と社長を守るための情報である連結バランスシートの作成にも専門家が必要になるからです。
 中小企業では、月数万円の顧問料さえ、もったいないはずです。会計事務所に対する不満を持っている会社も多くあると聞きます。専門家を依頼する会社側にも問題はありますが、専門家側にも問題はあるのです。この専門家との付き合い方については、別の号で考えていきます。

◆消費増税で輸出企業はぼろ儲け? 
 ご存知でしょうか。大企業、特に輸出企業は消費増税の恩恵を受けていることを。
 輸出をしている大企業には巨額の消費税が還付されているのです。例えばトヨタ自動車1社で1千数百億円、輸出上位10社で7千億円にもなります。
 消費税の税率がアップすれば、この還付金がさらに増加します。消費増税を経団連が主張するのもうなずけます。
 いずれにしても、消費税は転嫁の実態からいって経済的弱者から強者への所得移転を促す大企業優遇の税制といえるのです。
 中小企業にはこの様な恩典はほとんどないといってもいいでしょう。やはり中小企業は誰も守ってくれないのです。この消費税及び増税対策については、中小企業にとって特に大事なので後ほど別の号でお話します。
 アベノミクスも賃上げによる所得増がなければ意味がありません。しかし、賃上げは利益が出たから行えるものではありません。バランスシートとの調整が大事なのです。利益が出ても簡単に賃上げできない訳がここにあるのです。
 しかし、中小企業の多くは、あまりバランスシートを見ていません。日々の資金繰りと損益で精一杯です。これから生き延びていくためにも、消費税増税に立ち向かうためにも、バランスシートを見る経営は大事です。
 このバランスシートについても後ほどじっくり研究してみたいと思っています。
 
◆贈与・相続制度が変わる
 贈与税そして相続税が変わります。相続税が増税される代わりに贈与税の非課税枠が拡大されます。
 これによって、親・祖父母から資金を流そうというものです。しかし、少し待っていただきたいのです。非課税枠が拡大したからすぐに子や孫に資金をあげてもいいのかということを。
 制度はありますが、すぐにあげるのではなく、まず、子や孫に貸し付けるということを考えても良いと思っています。子どもの金銭感覚を養うためにも。そして金銭トラブルは、他人以上に親族間に多いということを知っておいて欲しいのです。
 誰も守ってくれない中小企業はどのようにして自分の会社を守り抜ければいいのか、消費税増税をキッカケに本音で考えてみたいと思います。

 

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