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税務・会計

第42号 公私混同と横領

会社を守り抜くための緊急対策

 社長は、不正をしてはいけないだけでなく、横領をさせる環境を作ってはなりません。
 しかし、中小企業の多くの社長は、不正や横領には無関心です。とくに不正に関して言えば、社長は会社のため、社員のためと、正当化していきます。
 今回と次回は、不正等についての概略をお話し、第44号から何回かに分けて、実際の不正や横領の実例を挙げてみます。やはり手口を知ることが、予防にも繋がるからです。

◆円滑化終了後、金融機関の逆襲が始まる。
 中小企業金融円滑化法で借入返済の凍結をしても債務者区分は下げないということでした。金融機関にとって本音は、「くそっ。今に見ていろ」であったに違いありません。 
 終了後、やはり牙をむいてきました。
 「正常先」のままにしたければ返済金の増額をしなければならないと要求されている会社もあります。
 また、凍結期間、業績が改善できなかった会社も多くあります。そのような会社に対して、一括返済を迫ってくることは容易に考えられます。金融機関はリスクを最小限に抑えたいため、債権をサービサーに売却することもあります。
 そのため、業績の悪い中小企業は、決算書等の化粧を考え始めるのです。不正の始まりです。

 金融庁によれば、円滑化法を利用した企業は30〜40万社前後で、そのうち5〜6万社が自主再建困難と推計しているようです。つまり、倒産予備軍が5〜6万社もあるのです。
 もちろん円滑化法が切れた4月以降、金融機関は融資先を一挙に倒産させてしまえば、不良債権が急増するため、そのようなことはしません。
 倒産のソフトランディングを図っていきます。その仕掛けとして多様な公的支援策があります。金融庁は「金融機関が、貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めるべきということは、円滑化法の期限到来後においても何ら変わりません」との方針を表明して不安の沈静化に入りました。
 相変わらず、紳士面は変わりません。これが本音だと思っていれば必ず豹変してきます。

 また、「中小企業・小規模事業者等への支援」として、地域経済活性化支援機構の設立、動産・売掛金担保融資の活用促進などを発表していますが、売掛金担保融資についてお話しますと、円滑化法を利用しても経営が改善しないような企業には、たとえ売掛金があったとしても、回収可能性に疑義があるものです。そのようなものを担保に融資が通るはずはありません。
 何もしなくて倒産したといわれないための支援策のような気がしてなりません。
 結局は、返済凍結後、改善しなかった中小企業は、ゆっくりと倒産に導かれるのです。
 しかし、中小企業は必死です。だから、不正をしてしまうのです。

◆これは不正?横領?
 まず、不正と横領について定義しておきます。
 不正とは、故意に行う帳簿や決算書の改ざんを言います。この故意というところが注意点です。故意ではない、つまり、誤りにより、帳簿や決算書が改ざんされた場合もあるからです。このような場合、不正に対して、誤謬(ごびゅう)といいます。
 不正と誤謬は根本的に異なりますが、誤謬、つまり故意ではなく、ミスで帳簿等の変更が行われたと釈明することもあります。

 次に横領とは、本書では金品の着服のことを言います。着服と横領も特別、区別せずに使用します。
 刑法では次のように規定されています。

 刑法252条 単純横領罪
 1.自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
 2.自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

 刑法253条 業務上横領罪
 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

 つまり、着服は立派な犯罪なのです。

 不正は、故意による帳簿等の改ざんなので、帳簿等の数値がおかしい場合、これが、故意にしたものなのか、ミスによるものか、慎重に見極めなければなりません。

 横領と公私混同についてお話します。
 そもそも本当に「公」と「私」を明確に区別できますか。
 仕事を自宅に持ち帰ることは公私混同でしょうか。会社の文房具を持ち帰ることもよくあるでしょう。会社のコピーを私用に使うことも。
 使っているうちにいつの間にか自分のものだと思ってしまうため、始末が悪いのです。
 また、自分でお金を出していないため、ムダに使うことも多いのです。
 この公私混同は明らかに横領になります。
 一般に公私混同が悪いと言われているのは、やはり、会社に有形無形の損害を与えるからです。その典型が「横領」なのです。

 

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