ただ“こうなればいいなぁ”と心の内で想うだけの願望と、“これを達成させる”という目標の違いをつくるものは何か。
達成される目標には、“いつまでに、これを実現する”という時間設定があることだ。
ソフトバンクグループを率いる孫正義さんは、19歳のとき、将来は起業して生きることを誓ったことで知られている。
そのときに立てた「人生五十年計画」には、“20代で名乗りをあげ、30代で軍資金1000億円を貯め…”と、
時間設定がきちんと為されていた。
孫さんの今日の成功は、彼が出会ったそうそうたる人脈の結果だと評する人が多い。
だが、私は、19歳にして、目標に時間軸をつけるという発想をもっていたところに、成功の秘訣を見る。
例えば、マイホームの取得は、立派な人生目標のひとつだ。だが、“いつか自分の家をもちたいよね”では、実現は難しい。
“い つか”と“そのうち”は、やってきたためしが無いからだ。
“40歳までに”とか“子供が小学生にあがるまでには”のように、しっかりしたタイムリミットを設けるべきだ。
時間設定が出来れば、“そのためには、30代で頭金をつくろう”というように、具体的なアクションプランが浮上してくる。
あとは、そのプランに基づいて行動をしていく。
「結果を出す」ことは、この行動の結果にほかならない。
ほとんどの企業は、経営計画を立案している。
経営計画はたいてい、長・中期計画と、短期=年次計画の二本立てになっている。
たとえば、長期計画では“グローバル企業への変身を目指す”のように、マクロのビジョンを掲げ、
短期の年次計画では、“今期中に中国市場の拠点をつく る”というようになっている。
経営学の教祖ピーター・ドラッカー博士は、
“プランを明確かつ具体的なものにするには、長くともせいぜい一年半を対象期間とするのが妥当。
問題は、一年半の間に、いかなる成果をあげるかである”
と 述べている。
個人的な短期目標も、一年以内に設定するのがほどよい目安だろう。
長期目標は、人生の最終目標である。自分の人生の方向づけを描くとよい。中期目標は、その中間段階だ。
三年ごと、五年ごと、あるいは十年ごとには“ここまでは、たどり着きたい”という、目標をいう。
登山をしたことがある人なら分かるだろうが、登山の目標は、頂上に立つことだ。
富士山なら、山頂でご来光をあおぐことかもし れない。
だが、一歩一歩、登っていくときに支えになるものは、五合目、六合目という中間的な指標である。
あそこの小屋までとか、あの岩の手前までといった、視野にとらえられる目標がないと、人はがんばれないものなのだ。
長期目標へ到達するにも、そこにいたる中期と短期の道しるべが必要なのである。
新 将命