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第166話 今年日本自動車業界に激震が走る

中国経済の最新動向

 今年、日本の自動車業界に激震が走る。長年にわたって優位性を保ってきた日本の自動車輸出が中国に逆転され、世界トップの座を明け渡す見通しだ。電気自動車(EV)の時代潮流に乗り遅れ、ガソリン車の生産に安住してきた日本にとっては、衝撃的な展開になりそうだ。

 

◆日本を猛追する中国の自動車輸出

 ここ2年、中国は毎年100万台増の勢いで自動車の輸出を増やし、日本を猛追している。その結果、2022年に中国の自動車輸出は前年比で54.7%増の311万台に達し、ドイツを上回り、日本の381万台に迫る(図1を参照)。

出所) 日本自動車工業会と中国汽車工業協会の発表により筆者が作成。

 

 23年1月、日本の自動車輸出は前年同月比4.9%減の25.6万台。一方、中国は30.3%増の30.1万台で、日本より4.5万台多く輸出している。2月も中国は32.9万台を輸出し、前年同月に比べ82.2%増となっている。日本はまだ発表していないが、2カ月連続で中国を下回ると見られる。

 

 今年通年、中国の自動車輸出は400万台を大きく突破し、日本を凌駕し、世界1位になる可能性が極めて高い。自動車輸出王国の日本に激震が走るのが避けられないと思われる。

 

◆中国の勢いが日本を圧倒する

  中国の自動車輸出増加の勢いは凄まじい。昨年前半までは毎月20万台未満で輸出していたが、後半から加速している。8月以降、車輸出は毎月30万台を超え、日本との差を大幅に縮小した(図2を参照)。

出所) 図2図3は日本自動車工業会と中国汽車工業協会の発表により筆者が作成。

 

 伸び率で見れば、日中両国の勢いの格差が歴然だ。2022年1~12月の伸び率を見よう。図3に示すように、日本の車輸出が前年同月比でプラスとなったのは8月から11月までの4カ月だけ。ほかは全てマイナスとなっている。一方、中国は毎月二桁増加で自動車を輸出している。3月(28.8%増)と5月(35.1%増)を除く全ての月は4割増を超えている。特に4月と6月は2倍以上伸びている。

 

 その結果、2022年通年では中国の自動車輸出が前年に比べ54.7%も増えたのに対し、日本は0.3%減だった。

 

◆中国自動車輸出急増のけん引役はEVだ

 中国の自動車輸出の主役は誰か?また輸出の主要目的地はどこか?

出所)中国汽車工業協会の発表により筆者が作成。

 

 図4は2022年中国メーカー別自動車の輸出台数と伸び率を示すグラフである。オレンジ色は中国の国産メーカーであり、青色は外資系メーカーだ。つまり、中国自動車輸出の主役は2人いる。国産メーカーと外資系メーカーだ。特に奇瑞、吉利、BYDという中国ブランド3社の伸び率はいずれも6割を超え、その躍進ぶりが目立つ。

 

 図5は2022年1~11月中国自動車の輸出目的地上位10か国を示す。メキシコ、チリなど中南米地域、サウジアラビア、アラブ首長国連合(UAE)など中東地域、ベルギー、英国など欧州、フィリピン、マレーシアなどASEAN地域は中国自動車の4大輸出先となっている。

出所)中国汽車工業協会の発表により筆者が作成。数字は22年1~11月の統計。

 

 なぜ中国の自動車輸出は急増しているか?主な理由は2つあると思う。1つ目はコスト、つまり単価の安さにある。欧州向け輸出の中国車を例にすれば、平均単価は僅か1万3700ドルで、ドイツ車の半分以下、日本車より30%安い。電気自動車(EV)は一般車より高いが、それでも平均単価が約3万3400ドルに過ぎず、欧州製の約5万8600ドルより遥かに安い。品質では中国車が欧州車を猛追しているため、価格の圧倒的な安さは中国の武器となる。

 

 2つ目は電気自動車の躍進だ。2022年中国自動車輸出311万台のうち、EVを中心とする新エネルギー車が前年比べ1.2倍増の67.9万台にのぼり、輸出全体の22%を占める。今年1~2月、中国の自動車輸出は前年同期比52.9%増の63万台となり、うち新エネルギー車は17万台で伸び率は62.8%にのぼる。現在、欧州で販売している電気自動車のうち、中国製EVは約10%のシェアを占める。中国自動車輸出急増のけん引役はEVと言っても、決して過言ではない。

 

 中国電気自動車を中心とする新エネ車の躍進は2021年から始まる。政府補助金の再開によって、20年まで3年連続で100万台強にとどまる新エネ車の生産と販売台数は、21年から一気に倍々ゲームに突入する。生産台数は21年に160%増、22年に96.9%増となる。22年に705.8万台にのぼり、20年(136.6万台)の5倍強に相当する(図6を参照)。販売台数も21年に160%、22年に93.4%、それぞれ増加した。20年に比べ、22年に5倍も増えた688.7万台を販売したのだ(図7を参照)。新エネ車のうち、EVが大半を占める。

 一方、22年日本の新エネ車(BEV+PHEV)の販売台数は僅か9.6万台、中国の1.4%に過ぎない。その差があまりにも大きい。

 

 現在、世界販売に占めるEVシェアは約1割。中国は最先端を走り、EVシェアは2割超。欧州は10%、米国は5%を占める。日本は僅か2.3%で、中欧米に比べて大きく後れを取っている。早急に対策を練り、遅れを挽回しなければ、日本自動車産業の凋落は避けられない。

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