前回「先輩社員の後輩や部下に対してのコミュニケーションや声掛けのコツ」をお話しました。今回は、「全体研修がしづらい中でのOJTの進め方やフォローアップの仕方」についてお話します。
1,OJT(On the job training)は、実際の職場で業務を通じて行う教育訓練のことです。上司や先輩が指導者となって、部下や新人に知識やノウハウをほぼ「一対一」で行います。したがって効率的な指導が可能です。指導内容については細かく記録しておくと、次のフォローアップに役立ちます。OJTで十分気をつけていただきたいポイントが二つあります。
一つ目は、相手に合わせた言葉を使って説明すること。うっかり自分のレベルで説明してしまうと、相手には分かりにくい説明になってしまいます。また忙しい業務の中で、ついこのくらいのことは分かるだろうという気持ちから、「相手が分かる言葉」での説明を落としてしまわないよう気を付けましょう。
例えば相手が社歴三ヶ月であれば、自分が社歴三ヶ月だった頃を思い出して説明の言葉を選びましょう。敢えて部下や新人に合わせた言葉で伝えるのは一手間かかりますが、指導者側にも丁寧な教え方が身に付きます。これはまさに「教えることは学ぶこと」です。基本の徹底が重要と言われて久しいですが、OJTの指導者はこの体験を通して、自らの振り返りの新たなチャンスを持つことが出来ます。
二つ目は、実践的な指導であっても、動きの一つ一つには明確な理由があるため、何故それをする必要があるかの説明を必ず添えてください。部下や新人の頭に入りやすくなります。さらに自分のこれまでの体験から、自分が教えられたときより「プラスα」の考え方や視点を指導の中に取り入れると、当時の自分よりバージョンアップした即戦力として動ける部下や新人が出来上がります。
成長が認められたら、本人以上に成長を喜んで、その嬉しさを全身で伝えてください。自分の言動が人にとても喜んでもらえる体験をする良い機会です。相手のモチベーション維持のプレゼントが出来ます。
さらにOJTの最終段階では、「よく出来るようになったところ」と「課題とするところ」を伝えてOJTを終了します。OJTだけですと実践のみですから、出来ればビジネスマナー研修などのOFFJTの内容もOJTの中で一つでも二つでも教えるように心掛けてください。フォローアップの時期はOJTが終了したところで伝えておくとよいでしょう。
指導者が適切と思える時期を二、三提案し、部下や新人に選んでもらいます。自らその日を選ぶことで本人がその期日を目指して、よりしっかり頑張れるモチベーションとなります。指導者のあなたは、OJT終了の翌日から、部下や新人の様子を克明に観察開始です。そして毎日観察した結果を記録します。記録のすべてが、フォローアップの指導に役立ちます。
2,フォローアップの仕方です。フォローアップ実施の当日、指導者にお願いをするのは、開口一番「身についたと感じられた良いところ」を三点ほど褒めてください。
日々の観察から、例えば「OJTの最終日に声量をもう少し出すようにアドバイスしましたが、はっきりした変化がすぐに出ていましたね。○○部長に呼ばれたときの『はい』の返事を覚えていますか?すぐに伺いますという感じが声量にしっかり出ていてとてもよかったです」や「お客様へのご挨拶とプラスαのお声かけはOJTのときから出来ていましたが、最近はそのときお客様に半歩自然に近づくという動作も加えられていました。言葉で近づくのと身体を近づけるというダブルのアプローチが同時に出来ていましたね!」など。部下や新人の様子はOJT終了後もずっと気にしていましたよ、が伝えられます。
褒められたことから始まるフォローアップは、部下や新人の向上心を刺激します。この頃には嬉しいことに部下や新人は、より指導者の言動から学ぼうという気持ちが強くなってきています。指導者としてアドバイスするということは、『私は出来ています』を背中でお見せ出来ないと、そのアドバイスに説得力が出ません。これがフォローアップの肝です。
そしてOJTの時以上に彼らの褒めるところをお探しください。その誉め言葉が「自信」に繋がり、さらに「ゆとり」が生まれ、新たな「気づき」が出来るようになるのです。教育するには、細やかで継続的な愛情に裏打ちされたエネルギーが必要です。その大事な役割を通して、自分も同時に高められることに感謝しながら、部下や新人と共有する時間を是非楽しんでください。