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- 第20回 『知っておきたい!外国人雇用の際のポイント』
美術工芸品の販売を行う中小企業の鈴木社長は、訪日外国人の増加に対応し、外国人労働者の雇用を考えるようになりました。
* * *
鈴木社長:うちの店にも外国人のお客様が明らかに増えましたよ。外国人のお客様がそれぞれ購入商品や店の情報について、SNSやブログ等ネットでも取り上げてくださり、インターネット販売の方にも海外からの反響があります。
賛多弁護士: それは大変素晴らしいですね。
鈴木社長:そこで、外国人労働者を雇用して、外国人のお客様への販売を強化したいと考えています。外国人を雇用する際のポイントを教えてください。
賛多弁護士:まずは、在留資格の確認をしてください。外国人は、入管法で定められている在留資格の範囲内でしか就労できません。
鈴木社長:在留資格を確認するにはどうしたら良いですか。
賛多弁護士:在留カード等で確認ができますよ。
鈴木社長:「在留カードの偽造」という言葉をどこかで聞いた気がするのですが、偽造かどうか、どうやって見分けたらよいのでしょうか。うちは美術工芸品を扱っているので、偽造や模造には特に神経をとがらせています。
賛多弁護士:カードの形状から、企業が偽造を見抜くのは容易ではない場合もあるようです。偽造の可能性がある場合には、法務省の「在留カード等番号失効情報照会」(*1) に在留カード番号と有効期間年月日を入力することで、在留カード番号が有効かどうかを確認できますよ。
鈴木社長:それを聞いて安心しました。外国人は、入管法で定められている在留資格の範囲内でしか就労できないとのことですが、在留資格外の仕事をした場合はどうなるのですか。
賛多弁護士:外国人が在留資格のないまま仕事をしたり、在留資格外の仕事をしたりした場合、そのような仕事をさせた企業は不法就労助長罪(*2) という罪に問われ、懲役や罰金となる可能性があります。
もちろん、当該外国人自身も罪に問われますよ。
鈴木社長:不法就労助長罪というのがあるのですね。気を付けなくっちゃ。
では、在留資格の範囲を気にせず雇える外国人はいないのでしょうか‥‥?
賛多弁護士:さすが社長!鋭いですね。
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」などの在留資格は、就労制限のない在留資格です。
これらの資格を持つ外国人は、「永住者」以外には在留に期限がありますが、日本人とほとんど同じように働くことができます。
鈴木社長:そうでしたか。それは良い情報をもらいました。
賛多弁護士:また、企業は、外国人の採用などの際、在留資格等を確認した上、ハローワークに届け出ないといけないので、そちらも注意が必要です 。(*3)
企業が取るべき措置については、厚生労働大臣が定める指針(*4)がありますので、ぜひ参考にしてください。
鈴木社長:思ったより、やるべきことが多いのですね。
でも、市場が広がると思えば、大したハードルではないですね。
賛多弁護士:鈴木社長は明確な目的を持っていらっしゃいますので、外国人の雇用を試みる価値は十分にあると思いますよ。
これからもサポートしますので、いつでもご相談ください。
鈴木社長:ありがとうございます。大変心強いです。
* * *
日本政府観光局(JNTO)が発表した2019年1~6月の訪日外国人客数(推計値)は、1663万3600人となり、半期として過去最高を記録しました。厚生労働省が取りまとめた2018年10月末現在の外国人雇用についての届け出状況によれば、外国人労働者数は146万463人で、2007年に届け出が義務化されて以降、過去最高を更新しています。
人材難への対応、グローバル対応、優秀な人材の確保など、外国人雇用の目的は多々考えられますが、ルールに則って適正な外国人の雇用管理を行う必要があります。
以上
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 木元 有香
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(*1) https://lapse-immi.moj.go.jp/ZEC/appl/e0/ZEC2/pages/FZECST011.aspx
(*2) 出入国管理及び難民認定法(いわゆる「入管法」)73条の2第1項
(*3) 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律28条
(*4) 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針