自分は面倒見がいいタイプだと思っていても、部下の眼には冷たく映っていたりすることがある。
自分が思い描いている自画像と、他人から見た自分とでは、どちらがより自分の本当の姿に近いのか。
他人から見た自画像こそが本当の姿であり、自分が考える自画像は“つもり”の自分である。
したがって、実際の自分(他画像) と、つもりの自分(自画像)の重なりあう部分が
大きくなればなるほど相互理解は深まる、という学説もある。
こうした話しを待つまでもなく、コミュニケーションを深め人間関係を円滑にしていくためには、
まず、自分を知ることが大切で ある。そして己を知るには、意識的に、あるいは無意識に
出てくる自分の行動をよく観察し、客観的な立場でとらえ直すことがポイントとなる。
世界的なプロゴルファーであるニック・プライスは、ス
ポーツ心理学者のカウンセリングを受けるようになって勝率がグンとアッ プした。
それ以来、多くのゴルファーが心理学者のアドバイスを求め始めたという話しを聞いたことがある。
私にしても、心理学の本をよく手にするのは、実際参考と なるところが大であるからだ。
例えば、アメリカでは「T・A」(Transactional Analysis)といった研究が一時盛んになされた。
“Transactional”とは“交流”のことで、互いの心理的やりとりを論理的に分析しようというものである。
それによると、私たちの心は「親としての心理」「大人としての心理」「子供としての心理」という3つの要素から
成り立っていて、時と状況によって「親としての心理」が強く出たり、その逆に「子供としての心理」が強くなったり、
それが人と接するときの態度にも現れるということ だ。
たとえば、社長が社員に向かって、「遅刻ばかりしないで、時間に余裕を持って家を出ろ」といった発言をするときには、
「テレ ビばかり見ていないで勉強をしろ」と子どもを叱るときと同じように、「親としての心理」が強く働いているのであるが、
それが出方によっては権威的になった り、独断的な性格として現れる。
また、「俺も一緒にカラオケにでも行くか」といった場合には、「子供としての心理」が作用し、社員と同じ視線にいる、
ということである。これは、ともすれば自分本位であったり、無責任といった性格としても表れる。
そもそも。この「T・A」は、心理療法に応用されていたものだ。
「親としての心理」「大人としての心理」「子供としての心理」という3つの心理の強弱を自分なりに分析することで、
自分を知るきっかけとなるはずだし、そのことによって、部下とのコミュニケーションも図られてこ よう。
そうすれば、部下との行き違いは少なくなってくるのではないだろうか。
新 将命