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採用・法律

第114回 物流業界の2024年問題。荷主が取り組むべきことは?

中小企業の新たな法律リスク

物流の2024年問題でおさえておきたい基本ルール

1 時間外労働の上限規制と適用猶予事業・業務

働き方改革の一環として労基法が改正され、2019年4月(中小企業は2020年4月)から時間外労働の上限規制が適用されています。

(1)時間外労働の上限規制

労基法では、時間外労働の上限が、原則、月45時間、年360時間と定められています(限度時間、労基法36条4項)。そして、臨時的な特別の事情が認められる場合には例外が認められますが(労基法36条5項)、このような場合であっても次の制限が設けられています。

①1年の時間外労働時間の上限は720時間を超えないこと(労基法36条5項)

②時間外労働が45時間を超える月数は年6か月以内とすること(労基法36条5項)

③1か月の時間外労働及び休日労働の合計時間は100時間未満とすること(労基法36条6項2号)

④対象期間の月と直近の1か月、2か月、3か月、4か月、5か月のいずれかの時間外労働及び休日労働の1か月当たりの平均時間が80時間を超えないこと(労基法36条6項3号)

 

(2)適用猶予事業・業務

時間外労働の上限規制が、一部の事業・業務(工作物の建設の事業、自動車運転の業務、医業に従事する医師、鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業)については、長時間労働の背景に事業・業務の特殊性等があることから、適用が5年間猶予されてきました。

そして、猶予期間が終了する2024年4月以降、上記事業・業務のうち鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業では、時間外労働の上限規制が全て適用されますが、他の事業・業務では一部特例つきで適用されることになります。

 

2 物流事業について

(1)労基法の上限規制

自動車運転業務に当たる物流事業について、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されます。ただし、臨時的な特別の事情が認められる場合の1年の時間外労働時間の上限(上記①)は、720時間ではなく960時間とされ、上限規制のうち次の規定は適用されません(労基法140条)。

①時間外労働が45時間を超える月数は年6か月以内とすること(労基法36条5項)

②1か月の時間外労働及び休日労働の合計時間は100時間未満とすること(労基法36条6項2号)

③対象期間の月と直近の1か月、2か月、3か月、4か月、5か月のいずれかの時間外労働及び休日労働の1か月当たりの平均時間が80時間を超えないこと(労基法36条6項3号)

 

(2)「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」

自動車運転業務については、労基法上の時間外労働の上限規制とは別に、運転時間や勤務間インターバルについて定めた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)も遵守しなければなりません。改善基準告示も2024年4月1日から改められます。

 

3 荷主の取組について

今年6月、経済産業省、農林水産省、国土交通省が連名で「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を出しました。物流の2024年問題に対応することを目的に、発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者が早急に取り組むべき事項を定めたものです。

ガイドラインには、発荷主事業者と着荷主事業者が取り組む事項について、両事業者に共通する事項、各事業者に関する事項が定められています。例えば、発荷主事業者・着荷主事業者に共通する取組事項(概要)は、下記のとおりです。

実施が必要な事項

①物流業務の効率化・合理化(荷待ち時間・荷役作業等にかかる時間の把握、荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール、物流管理統括者の選定、物流の改善提案と協力)

②運送契約の適正化(運送契約の書面化、荷役作業等に係る対価、運賃と料金の別建て契約、燃料サーチャージの導入・燃料費等の上昇分の価格への反映、下請取引の適正化)

③輸送・荷役作業等の安全の確保(異常気象時等の運行の中止・中断等)

 

実施することが推奨される事項

①物流業務の効率化・合理化(予約受付システムの導入、パレット等の活用、入出荷業務の効率化に資する機材等の配置、検品の効率化・検品水準の適正化、物流システムや資機材の標準化、輸送方法・輸送場所の変更による輸送距離の短縮、共同輸配送の推進等による積載率の向上)

②運送契約の適正化(物流事業者との協議、高速道路の利用、運送契約の相手方の選定)

③輸送・荷役作業等の安全の確保(荷役作業時の安全対策)

 

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 加藤 佑子

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