この数字は、インターネット通販を利用するシニア層(60 歳以上) の年間購入金額である( 総務省調べ)。
ネット通販の売上高の中で、シニアのシェアはまだ一割に満たないが、全世代の中で、最も高い金額となっている。
シニアは、他の世代に比べて消費意欲が高く、ヤフーショッピングでは、シニアの注文が昨年比で1.4 倍に伸びるなど、今後の需要拡大に大きな期待が寄せられている。
一般的に、ネット通販の注文ピークは深夜だが、朝型の生活をするシニアにとって は、午前11 時からの1 時間がゴールデンタイム。
各ショッピングサイトでは、そのピークに合わせて、タイムセールを実施したり、売れ筋のこだわり食品や、園芸用品といった趣味分野の特設コーナーを開設したりと、シニア需要を取り込むべく、矢継ぎ早に販促策を打ち出している。
サイト作りの配慮としては、「画像を大きくして見やすいように工夫する」「ページの移動が少ないシンプルなサイトに設計する」といったシニア向けの対策が必要だという。
一方、小売業を見ても、午前中に早々と買物を済ませてしまう“ 朝型シニア”のライフスタイルに対応して、開店時間を繰り上げる企業が出てきている。
イオンでは、4 月下旬から東北6 県の38 店舗の開店時間を午前8 時に変更していたが、さらに6 月1日からは、9 月上旬までの期間限定で、全国1,200 店で開店時刻を午前7時に変更。シニアとサマータイムの需要を見込んでいる。
またマツモトキヨシでも、今年度から首都圏の約100 店舗の開店時間を1 時間程 度早める計画だ。
このように、開店時間の繰上げは、高齢化を見据えた一つの施策として、小売業全体に広がりそうだ。
これは、消費者の「買いやすさ」「使いやすさ」を追及するサービス業の基本とも言えるが、遅まきながら、有店舗も有望市場であるシニア顧客の掘り起こし策として、マーケティングを兼ねて導入し始めたということである。
この背景には、800 万人以上といわれる団塊世代の定年退職が、今年、本格化す ることが大きい。
時間とお金に余裕を持つシニアのネット通販利用は、確実に増えると予測されており、小売業をはじめ、旅行・スポーツなどのサービス業全体が、“ 高齢者
シフト”を強めている。
このシニア世代の年間消費支出額は、2011 年度に100 兆円を突破し、個人消費 の44%を占めている。国内消費の大きな担い手として、シニアの存在感は増すばかりだ。