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- 社長のための“儲かる通販”戦略視点
- 第247号 9兆6,580億円
この数字は、東南アジア6カ国の2025 年のEC市場規模予測である。米グーグルとシンガポール政府系投資会社、テマセク・ホールディングスによると、東南アジアにおけるネット通販を含む電子商取引(EC)市場の規模は、2015 年の55 億ドルから25 年には878 億ドル(9 兆6,580 億円)に拡大。10年間で16 倍という驚異的な急成長市場になると予測している。とくに2.5 億人の人口を抱えるインドネシアは、離島が多く商業施設が不足しているため、ネット通販の急速な普及が見込まれている。
この地域で最大級のモール型・ショッピングサイトを展開しているのが、“東南アジアのアマゾン”と称されている「Lazada(ラザダ)」だ。このラザダにいち早く目を付けて買収に動いたのが、グローバル展開を推し進める中国のアリババ・グループで、昨年の買収に続き、今年6月に10億ドルの追加投資を行い、完全にラザダの支配権を手中に収めている。
親会社となったアリババはラザダと連携し、アリババの通販サイト「淘宝網(タオバオ)」を年内に東南アジア6カ国で展開するほか、電子決済「支付宝(アリペイ)」の普及も推進していくという。東南アジアで実績のある「ラザダ」をブランドとして前面に押し出しつつも、商品供給や仕組みではアリババの経営資源を活用し、物流でも連携を強化していく戦略である。
まずは、ラザダが今春からシンガポールとマレーシアで始めているのが「タオバオコレクション」だ。これは、商品の供給者を優良な業者などに絞り込み、対象商品を約400 万点に厳選して粗悪品や模造品を排除。サイトも英語で表記するなど、新方式で市場を開拓していく狙いだ。
ラザダはインドネシア、ベトナム、タイ、フィリピンの残り4市場でも現地版のタオバオを年内に始める計画で、ラザダの共同創業者でマーケティング部門の責任者を務めるアイモネ・リパ・デ・ミアーナ氏は、「企業や消費者との関係構築から物流、決済まで幅広く含むプロジェクトだ。両社がいかに効率的に協力し、成果を出せるかの証しになる」と意気込む。
経済成長が続く東南アジアは所得水準が上がっているのに加え、40 歳以下が7割を占めるなど、中国に比べ若者の割合が高く、ネット通販の急拡大が見込まれている。近く東南アジアへ進出するとみられるアマゾン・ドット・コムに対抗するためにも、ラザダはアリババ・グループとの連携により地盤強化をし、急ピッチで迎え撃つ準備を進めている。