賃金セミナーの会場で管理職の仕事についてお尋ねしたときのことです。
「管理職の仕事とは、社長の立てた経営計画を実現することです。課長の役割は部下に上手に仕事を割り当て、部下を励ますこと。そして指示した仕事の出来栄えを審査し、成果を部長に報告することです。」と模範的な答えが返ってきました。
労働基準法第41条の「監督若しくは管理の地位にある者」に対しては、時間管理を行わないことが認められています。
一部の企業は、課長任用と同時に「役付者の地位についたから…」といった考え方で今までの給与に相当額を加算して、ご祝儀的に昇格昇給している例がありますがそれは大きな誤りです。
正社員には毎月の給料のほかに賞与や退職金の制度があり、昇格時ご祝儀昇給などで操作を行うことは、新たなアンバランスや凸凹発生の原因となるからです。加えて、労働基準監督官から「名ばかり管理職だ、第41条に定める管理監督者には該当しない」と指摘され、昇給後の所定内給与を基礎に残業および休日出勤の再計算を命じられたら大変です。
さらに、ご祝儀昇給には避けられない大きな欠点があります。それは昇格願望に抗しきれず、処遇のために職位乱設の傾向が生じたり、派閥や情実人事の横行を助長する結果となりやすいです。
「偉くなったのだからご祝儀で…」と言った旧来の身分資格的な昇格の考え方から脱皮しなければ精鋭組織は作れないのです。
しかし課長以上の者に対しては、別に残業手当相当額を保障しなければ、係長以下との給与総額が逆転する恐れが出てきます。課長以上の役職者に対しては、残業保障的意味の管理職手当を設け支給すべきです。
例えば課長職の家族手当を除く平均給与が37万円であり、月の所定労働時間は168時間(8時間×21日)で、係長以下の残業時間が20時間程だとすれば、残業保障的意味の管理職手当の金額は以下のように計算できます。
(37万円÷168時間×1.25)×20時間≒5万5千円
もちろん実際の残業には個人差や職場ごとのちがいがみられますが、そのような場合でも特殊なケースを除いて、全般的な平均値を基準として統一的に手当金額を決定することが妥当です。
中小企業や商店などでは、特殊な例として、係長や主任に対して、若干の役付手当をつけることがありますが、残業計算をしない場合は別として(労働基準法の解釈上からは問題とされることが多い)なるべく廃止の方向へもってゆくべきです。