イギリスのコリンズ英語辞典が発表した2021年を象徴する「今年の10ワード」は、トップが「NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)」で、その他にはMetaverse(メタバース)、Crypto(暗号資産)、Double-Vaxxed(2回ワクチン済)、Pingdemic(ピンデミック)、Hybrid Working(ハイブリッドワーク)、Climate Anxiety(気候不安)、Neopronoun(新代名詞)、Cheugy(チューギー)、Regencycore(リージェンシーコア)が選ばれた。
新型コロナウイルスの関連ではワクチンを2回接種済みの「Double-Vaxxed」や、イギリス保健当局による接触追跡アプリの通知(ping)が鳴りやまなくなる「Pingdemic」、在宅勤務とオフィスワークを組み合わせる働き方の「hybrid working」などが入ったが、Facebookが「ソーシャルメディア企業からメタバース企業になる」と宣言して「Meta」に社名変更したインターネット上に作られた仮想空間「Metaverse」、ビットコインなどの暗号資産を表す「Crypto」なども入った。
また、時代遅れになったことを意味する「cheugy」、ジェンダーに配慮した新しい代名詞の「Neopronoun」、気候変動への不安によって引き起こされる苦悩である「climate anxiety」、1811年から1820年までのイギリスの摂政時代に触発されたファッションである「Regencycore」など、世相を反映したものも選ばれた。
■NFTとアートのこれから『符号理論/Coding Theory』
今年で10回目となる、2005年に閉校した千代田区立練成中学校の校舎を改修した「アーツ千代田3331」を会場とするアートフェア「3331アートフェア」が、10月29〜31日に開催されたが、中でもNFTをテーマにした「NFTとアートのこれから『符号理論/Coding Theory』」に注目が集まった。
先駆的にメディア・アートに取り組んできた4人の作品が展示されたが、中でも「Brave New Commons」という、藤幡正樹氏が1985年頃に初期のApple・マッキントッシュのMacPaintという作画ソフトで作り、フロッピーディスクに保存されていた画像をNFTで販売するという試みが話題を呼んだ。
ブロックチェーン技術で所有権履歴を記録することにより、いくらでもコピーできるデジタル画像に所有権を持たせる「NFT」は、ビープル氏の作品が6,900万ドル(70億円)で落札されたのを始めとして、クリスティーズ、サザビーズといった世界的なオークションで高値で落札され、ニュースとなっている。
2021年第3四半期のNFT販売額は、前期の8倍で100億ドルを超えているが、購入は暗号資産(仮想通貨)で支払われることが多く、「暗号資産バブル」の一環と考えられるが、1960年代に登場したアンディー・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズなどの「ポップアート」に似ているという指摘もあり、単なるバブルと片付けるのは早計と思われる。
そのような中で今回藤幡氏は、過去の落書きのようなデジタル作品を、初期価格を購入希望者で割って最終価格を確定するという新たな方法で販売した。
NFTはコピー可能なデジタル作品を「一点もの」として所有者の証明ができるのだが、それを「共同購入」ではなくそれぞれの人に所有権を持たせながら、「人気があるほど価格が下がる」という新たな試みを行っており、これこそ「メディア・アート」なのだと感じた。
======== DATA =========
●コリンズ英語辞典「今年の10ワード」
https://www.collinsdictionary.com/woty
●3331 ART FAIR
https://artfair.3331.jp/
●Brave New Commons
https://mf.3331.jp/?fbclid=IwAR2rw8iJV8neilP04O_Fa0NMd3xc4JVZfa9u1LkCcKQzxkfINXxZ7xwsFC8