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第3話 「これ、ちょっと考えてくれるか?」

東川鷹年の「中小企業の人育て」

  先代社長は、草創期の頃、たくさんの“課題”を与えてくれた。そうすることによって自らの手で【分身】を育てたのである。
 
 よく中小企業の社長から、「自分の分身がいない。」との愚痴めいたことを聞くことがあるが、「いない」のではなく、「育てていない」のであ る。
 
 「人を育むのは仕事。」であるという認識をまずは社長が持つべきである。そして、具体的に考えさせ、実践させることだ。実践なくして空理空論 では人は育たない。
 
「これちょっと考えてくれるか?」そう言って、よくメモを渡された。初めて課題をメモで渡された時、一生懸命考えてA4の紙に2、3枚 自分の考えをきっちり書いて持っていったら読みもせずに開口一番、叱られた。
 
「こんなもん、読む気するか。こんなに時間をかけてきれいに清書してこられたら断られへんやろ。俺が言ったことに対して、方三条で書いてくれる か。」私は、「方三条って何ですか?」と尋ねると、
 
「私はこう思います。と最初は走り書きで三段くらいで分けて、俺が渡したメモに簡単に書いてあとは口頭で話せ。まずは、君の考えが知りたいんや。
 
 おっしゃった狙いはこうですね。内容はこんな感じで結論はこう。やり方はこういう段取りで進めようかと思います。とな。
 
 その話し合いで、よし、こうしようと決まればあとは具体的に考えてまとめればええ。君みたいなことしたら時間と紙がもったいないやろ。なんぼ 君がきれいに書いても俺と想いが同じでなかったら意味がないやろ。
 
 確かに、いくらやり方を考えたとしても、狙いを含め、社長の意図するものが何なのかをしっかりと掴まなければ、 結局無駄な時間を過ごし機会損失をするだけである。(ちなみにメモで渡されることが重要で、「言った」「言わない」などの 食い違いを防ぐためにも重要である。)
 
 それからというもの、まずはスピード重視で、朝言われたら昼、昼言われたら夕方、夕方言われたら夜、夜言われたら翌日の朝。途中でもいいから 自分の考えを言いに行き、社長の考えと合っているかの確認をしたものである。
 
 「うちの社員は課題を持っていない。」と嘆く社長も多いが、まずは、自ら考え行動する社員を育てるためには、社長自らが分身を育てる意味にお いても、課題を与えることが重要である。

 

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