書店に行く魅力の1つは、今のトレンドがはっきり見えるところです。
今年で言うならば、ChatGPTや生成AI関連の本、新NISA、さらには、イスラエル・パレスチナ問題を始めとする国際情勢、前回紹介した『源氏物語』関連といったあたりが、目に付きます。
一方で、少し前にズラリと並んでいた『教養としての~』や、『ビジネスに役立つアート』の類の本は、めっきり見かけなくなりました。
本来、教養やアート関連の本は、流行に関係なく、ずっと読まれるべきだと考えますが、仕事に直結しそうな本が優先されるのも、やむを得ないところ。
ならば、今のトレンドをおさえつつも、教養の充実と実利の両方につながる、一石二鳥になるような本はないものか、と探してみたら…
見つけました。
それが今回紹介する
『「アート」を知ると「世界」が読める』(著:山中俊之)
です。
著者の山中氏は、外交官としてエジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任するなど、世界97カ国で経験を積み、現在は、芸術系大学で教鞭をとる異色の存在。
アートは欧米エリートにとって不可欠な教養であるにも関わらず、残念ながら日本ではそのような認識が持たれていない、といっても過言ではない状況。
そこで、本書ではアートが、政治、経済、国際情勢などを読むにあたって、いかに有益なのかを具体的に解説。
“ビジネスに役立つ”と謳っておきながらも、実際は西洋美術入門のような本とは、一線を画します。
著者は大学で「世界のアートから見える世界情勢」をテーマにした講義をしているとのことですが、なるほど納得。
この激動の社会を、アートを素材として、世界の五代宗教や民族問題なども踏まえて、さまざまな観点から考察していくところが、実に魅力的。
想像力が豊かになり、創造性が高まるのはもちろん、ロシア・ウクライナ情勢や、イスラエル・パレスチナ問題なども、アートを通じて理解できる!
といっても過言ではないほど。
個人的には、著者が一番好きだという画家シャガールについて、ビジネスパーソンが注目すべき理由が、特に興味深かったですね。
本書を読むことですぐに役立つ情報や思考が得られるのに加え、この一冊をきっかけに、どれだけの世界が膨らむのか?
計り知れないメリットを秘めたこの一冊、さっそく読んでみてください。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
『ブラック・コーヒー』(歌:ペギー・リー)です。
発表から50年以上の時を経ても、尚人気を集めるペギー・リーの代表作。
喫茶店でコーヒーをゆっくり楽しんでいるかのような雰囲気たっぷり。
スタンダードナンバーを通じて世界が見えてくる感もあり、本書と合わせてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。