前回「4月入社した社員へのフォローのポイント」についてお話しました。今回は、「社内へのホスピタリティを考える」をお話します。仕事は一人では出来ないので社内のスタッフ同士が「リスペクトやホスピタリティを持つ組織」にすることが先決です。
まずリスペクトから解説します。カタカナ日本語としてすでに市民権を持つ言葉になっていると思いますが、あえて広辞苑で確認すると「尊敬、敬意、敬意を払うこと」でした。人それぞれお考えがおありと思いますが、私の個人的見解を述べます。唐突で恐縮ですが、プライベートの話です。亡くなった父の死顔は人の命は「有限」であることを如実に語っていて、私の頭の中でのみ分かっていた「有限」が物の見事に打ち砕かれました。死んでなお親というのは自分の身をもって子に最も大事なことを実感させてくれるのかと心が震えたことを覚えています。
この日を境として、私は「人」との出会いにとても感謝するようになりました。日々の中で生きているというタイミングが合わない限り、どなたとも出会えないことを見落としてきていました。その気づきから相手の存在そのものを、より尊重できるようになりました。「人」への関心も強くなりました。ただ前述のような説明を研修で申し上げてしまうと、新人さんには少し唐突過ぎると思い「一日のほぼ三分の一を一緒に過ごす会社のスタッフは、皆さんにとってまさにセカンドファミリーです。家族と同じようにとても、とても大切な人たちです。お互いの存在はたっぷり尊重しあいましょう」の言葉に変えて伝えております。
一方ホスピタリティは、相手の心理面に対するアプローチです。その方に合った部分の対応に重きを置いています。「人」への関心という意味で申しあげます。かつて飛行機の乗務員として入社し訓練を受けていた頃、教官から頂いたアドバイスが今でも心に残っています。「乗客をよく観察して、コールボタンを押される前に近づき『お客様、何かご用がおありでしょうか』と笑顔で言える乗務員になりなさい。人は何か望んでいる時、着席していても必ず身体の一部のどこかを動かすので、この場合は特に黒目を何ミリか動かすので見落とさないように。」と言われました。
まさにホスピタリティの神髄を学べて有難いと思ったことを覚えています。対スタッフであっても細やかな観察の重要性は変わらないです。日々スタッフ間でやり続けていると、それが自分にとって習慣になり、お客様に対しても当たり前に出来るようになりますから、社内のホスピタリティ・トレーニングは是非頑張っていただきたいと願っています。
また職種として、研修依頼をいただくといろいろな会社様に伺います。外部からその社屋に一歩入った時の雰囲気は驚くほど様々です。スタッフ同士のリスペクトやホスピタリティをお持ちの会社様に研修で伺うと、訪問した瞬間の『大気』は明るく温かく感じます。私は『人として同じ土俵を立ち位置にしている』ということが関係していると思います。この会社様の場合、通路ですれ違った社員のどなたからも笑顔が拝見出来ました。このような光景を目にすると、この会社様に伺えてよかったと心底嬉しく感じます。
リスペクトに繋がる「有限の命」をきちんと理解できていると、相手の存在に対して尊重だけでなくさらに感謝や慈しみも湧いてくると考えます。「有限」だからこそ、時間の全部を輝かせたいとお互い思えもするでしょう。見えている景色が同じと言う信頼の絆は、ヒラルキーも受け入れやすくなります。それぞれのポジションでの役割において会社全員の目標である「会社の理念」に則り、任務を全うする気持ちも起こります。自分のポジションの任務の全うは会社への貢献に即繋がり、会社の存在意義として大事な『社会に貢献する』にも、しっかり繋がります。
個人として働くことの第一義はもちろん生活のための報酬を得る事でしょうが、そこで留まってしまうと自分の大事な役割を忘れてしまいます。そこにはあまり高くないレベルでの不平不満が生まれると私は感じて来ました。社会人になった新人さんの働く目的は、会社への貢献・ひいては社会への「貢献」にある事を皆さんはしっかりお伝えになってください。新人さんは学生時代に「貢献」という言葉をあまり耳にして来なかったでしょう。先輩の発する「貢献」という言葉は、良い意味で新人さんの心にしっかり届くと考えます。
少し話が抽象的になってしまいましたので、前述した「黒目を何ミリか動かす」仕草の裏にある気持ちのような具体例を、幾つかあげます。「仕草の裏にある気持ち」を知った分だけホスピタリティに繋がる対応に役立ちます。
次のページ「仕草の裏にある気持ち」を知り、ホスピタリティに活かす
1
2