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社員教育・営業

第180回 コミュニケーション上手になる仕事の進め方103『研修効果を持続させる仕組み』

デキル社員に育てる! 社員教育の決め手

 前回「社内へのホスピタリティを考える」についてお話しました。今回は、「研修効果を持続させる仕組み」についてお話します。この「持続させる」というところが大きなポイントです。どのような内容の研修にも該当することですが、まわりの方々のフォローがあるかないかで、研修の効果が十分に発揮されるか、されないかと密接に関係します。

  つまり研修を受けた人に、社内の人全員が関わっていただきたいということです。研修担当者一人にお任せしないで、周りの方全員のフォローが良い結果に繋がるのです。例えば突然ですが、新人研修のご依頼を一日のお時間で頂くと、必ず私は来客応対の項目の中に「お茶の淹れ方」を含みます。(半日研修では時間の関係で入れられません)昨今お茶そのものがペットボトルに変わり、ご家庭に急須がないという現状と伺います。

 しかし、古くから先人たちが大切にしてきたおもてなしの文化です。ビジネスマナーの範疇でのお茶の淹れ方ですが、お客様の前に差し出すまでの流れを丁寧にお話しています。お茶の種類・注ぐお湯の温度・同じ濃さに入れるには・茶碗にお茶を注ぐ量・茶托と茶碗をセットにするのはどのタイミング・お盆を持つときの手の位置・茶碗の正面はどこか・お客様のどちら側に置くのか・お出しするのは両手か片手か・無言でお出しするのか一声かけてお出しするかなどを一通り、受講生の集中度を拝見しつつ進めます。どなたも良くメモを取りながら聞いてくださいます。ということは、皆様ご存じないことは、真剣に聞いてくださるということです。

 あるとき九州でこの話をしたあと、区切りがよかったので休憩タイムを取りました。受講生の男性社員がすぐにさっと私のところに寄ってきました。私は何か質問がおありなのかと近づきましたら、「先生、自分の前にお茶が一杯出るまでにこんなにたくさんの心配りがあったのですか!今まで全然気づきませんでした。明日からはお茶をだされたら、心を込めて『有難うございます』としっかりお礼を言います。」とおっしゃいました。この言葉を聞いた私は彼の感性が素晴らしいと思いました。

  今まで自分中心の学生時代の自分の立ち位置から、相手中心の社会人の立ち位置への気づきを、まさに今なさったのです。その後現場に戻った彼の中には確実に変化があったはずです。その変化がたとえ小さな変化であっても、先輩や上司は見逃さないで観て頂きたいのです。今の新人さんは承認欲求が以前よりやや強いように思いますので、小さな成長でも根気よく褒めてあげて頂きたいと思います。

 新人さんは研修で学んだことは現場に活かそうと意気込んで、研修会場をあとにします。そのとき先輩・上司の見守りは、大変意味があります。当事者の変化に気づき、言葉にだして伝えてもらうと、物凄く大きな励みになります。先輩が認めてくれた、上司が変化に気づいてくれたという大きな自信に繋がります。周りの皆さんの一言は、研修中に講師から褒められるより、何倍も嬉しいはずです。出来れば公平に目線が配れるように、研修担当の方があらかじめ同じ空間に働く先輩一人ひとりに「○○さんの見守りをお願いします」とお願いしておくとよいでしょう。可能であれば一人の先輩に一人の新人さんが理想的です。研修の数日前にそのお願いを済ませておきます。お願いされた先輩は見守る方の様子をあらかじめ把握しておきます。そして研修受講後の一日目から見守り開始です。

 研修効果の定着を図ることは、会社にとって一つの大きな課題です。ただ会社全体の人にとって、負荷がかかりすぎると「絵にかいた餅」になりかねませんから、私は無理のないところで、かつて同じ内容の研修受講者が見守り側として付いてくださるのが適任かなと感じています。本人が受けた時の気持ちなども語れるし、現場に出た後あの事は当時あまりピンとこなかったけれど、実は自分が思った以上に大事なことだったと後でわかったとか、経験値が違うことで理解にも差があることなども話してあげられると思います。今はeラーニングのような教材もありますから、うまく利用すると、もしも言いにくいところなどの指摘に困った時は、一緒に映像を観ることで見方の違いなども伝えられます。


 最後に、研修担当者はお願いした新人○○さんを担当してくださっている先輩に、「お世話になっています。その後、進捗状態はいかがですか」と様子を聞いてまわってください。「何か気になることがおありでしたら、いつでも私にご連絡ください」も忘れずに。仕事に支障が出ていないかを見極めることも重要です。そうであれば、今回の見守りはご本人のブラッシュアップにも繋がっていますから、一石二鳥です。

 講師側は、せっかく受講いただいた研修が会社様にとって、良い影響を維持し続けていただきたいと心から願って研修を修了します。ある意味私と受講生たちは、『一期一会』です。受講後の実践の環境を整えてさしあげられるのは、先輩や上司の皆さんにほかなりません。気負い過ぎても逆効果になってしまいますから、一方通行の指導スタイルのようになってしまっては、もったいないです。ときには先輩や上司がお客様役になって実際映像をお撮りください。すぐに映像を共に見ながらいくつものポイントの指摘が可能です。このときの我儘なお願いは、実寸大で見られると効果が大です。勿論先輩・上司のコメントは必ず褒めるポイントからスタートしましょう。

 当たり前のことですが、人は褒められことから入ると、課題を聞くときの心の窓が広くなります。また、声の明るさや抑揚がありお客様の鼓膜に気持ちがよいかなどの録音もなさってください。このような実践メニューは。モチベーションが上がること間違いなしです。

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