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製造業

第297号 動作経済の4原則を暗記してください

柿内幸夫─社長のための現場改善

 今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実例を挙げて解説します。  

 【急所3~6】動作経済の4原則まとめ。(20~26頁)

 先回に引き続き、「動作経済の4原則」についてお話しします。今回は動作経済の4原則のまとめを行います。
 
 《動作経済の4原則》
(1) 距離を短くする。
(2) 両手を同時に使う。
(3) 動作の数を減らす。
(4) 楽にする。
 
 まず最初にお願いがあります。この動作経済の4原則をすべて暗記していただきたいのです。
 
 暗記なんかしないでも、手帳に書いておいて必要な時に出してみればいいのではないか…と思われる方も多いでしょう。しかし、それでは私が期待する改善のスピードには到達できません。
 
 私が望むスピードとは、現場で作業が目に入るすべての時間中、暗記によって頭の内側に貼られた動作経済の4原則のチェックリストで次々と原則に反する問題点が顕在化して、その場で改善が行われて、あっという間に作業者が楽に仕事ができるようになって喜んでいるというレベルです。
 
 「気が付いたときにポケットから手帳を取り出してチェック」ではなく、「いつも」なのです。
 
 動作経済の4原則は、別の言い方をすれば「動作改善の方法」です。ですから、この改善が行われると作業時間は短くなります。
 
 それも、「品質の向上をともない」、「楽に」、「継続的に」、です。
 
 動作経済の4原則を使わずに、作業者に対して単純に「急げ!作業スピードを上げろ!」といった指示・命令をするだけでは、作業時間は早くなっても、「品質の向上をともない」、「楽に」、「継続的に」はムリです。
 
 なぜなら、改善を行わずスピードだけ上げても、疲れるし、品質の低下が心配だからです。
 
 一方、動作経済の4原則で改善を行う場合は、手の動きのスピードを上げることを前提にしないで、まずは4原則に従って、モノの置き方や手の使い方などを研究し指導し練習します。
 
 動きがスムーズでリズミカルであれば、練習しているうちに手の動きのスピードが自然に上がってくることもしばしばあります。楽だからです。
 
 しかし、その改善をしないでスピードだけ上げることになると、急発進・急停車状態になってしまい、継続してできない作業になることが予想されます。
 
 私はよく、ピンボードを使って動作経済の4原則の実習をします。30本のピンを30個の穴にさすというシンプルな作業なのですが、両手を左右同時に対象に使い、ピンをそれぞれの手で直接取ってさすやり方で行うと、楽々20秒でできます。
 
 しかし、もし片手でピンをまとめて取ったうえで、もう片方の利き腕で一本ずつさすやり方ですと、どんなにものすごく頑張っても30秒くらいかかるのです。
 
 つまり、後者の片手作業方式の人に20秒でできるように頑張れと言っているのが、先ほどの「急げ!作業スピードを上げろ!」といった指示・命令をすることです。
 
 これについて、ひとつ事例をご紹介します。
 
 先日、N社でみんなで検査作業の動作改善を行いました。私は先回の訪問時に、「次回はここの作業の改善をみんなでやろうね」と予告しておりました。そうしたところ、N社の皆さんは前もって作業改善を実行してしまい、先日伺った時の作業は、先回とは全く違っていました。
 
 「ああ良くなりましたね、これでOKです」と言ってもよかったのですが、ちょっと悔しかったので、私は暗記している動作経済の4原則を使って、さらなる改善に臨むことにしました。
 
 こうなると我ながら大人げないのです。どうやったかですが、
 
 「みなさーん、距離はこれ以上、1㎝も短くならないのですか?どんな手を使ってもいいですから、距離を更に短くしてください」
 
 「例えば箱を小さくしたら、距離は短縮されますよね」
 
 と大声で言いました。すると、平らに置いてある箱を少し斜めにするだけで、1㎝短くなることが分かりすぐ実行してくれました。
 
 こんな感じで改めて4原則を一つ一つ細かく見ていくと少しでしたが改善ができ、ほんの数秒ですが短縮することができました。
 
 これも私が動作経済の4原則を暗記していて、一つ一つ大声で指示ができたからです。思いっきり重箱の隅を楊枝でほじくる改善をしてしまいましたが、実は自分でもびっくりしました。
 
 ぜひとも動作経済の4原則の暗記をお願いします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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copyright ゆきち先生 http://yukichisensei.com/

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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