「氣の道場」で指導していると、肩こりや腰痛にお困りの経営者が多いことに氣づきます。「肩こり・腰痛をお持ちの方はいませんか」とお尋ねしても、始めは全く反応がありませんが、指導内容に間違いがないことが分かって信頼関係が出来てくると、こっそり「実は・・・」と相談を受けます。
肩こり・腰痛は万病の元と言われ、その原因は様々です。しかし、最も大きな要因の一つは「姿勢」です。不自然な姿勢だと肩や腰に負担がかかるのです。
第3回の「姿勢」でお伝えした通り、「自然な姿勢には自然な安定がある」ので、氣のテストを通じて自然な姿勢を確認することが出来ます。特に、重い荷物を持った時などに、全身でバランス良く支えて、肩や腰に負担がかからない姿勢を確認することが重要です。この「自然な姿勢」を体得し、日常生活で心がけることで、姿勢を原因とする肩こり・腰痛は確実に改善して行きます。
また、「左右均等」も重要です。日常生活においては、私たちは姿勢や動作に癖を持っています。右利きの方は右手をよく用います。車の運転では右足しか使わない方が多いでしょう。オフィスで座る位置が固定されることで、常に右(もしくは左)を向いている方もいるでしょう。こういった左右の偏りが身体のバランスを悪くしています。ゴルフもまた片側だけ用いることが多いですね。両側でスイングの練習をする人は少ないでしょう。
せっかく氣のテストで自然な姿勢を確認しても、日頃の環境で左右均等が崩れていると氣は滞ってしまい、様々な身体の不調となって表れるのです。
「氣の道場」で指導した際、ある経営者がひどい肩こりを持っていました。肩こりも本当にひどくなると首筋や背中まで全体が張って固くなり、頭痛まで引き起こします。この方は病院に行っても民間療法を試しても一向に良くならず、それによって軽い鬱の状態に陥っていました。
氣のテストで身体に負担のかからない姿勢をお伝えすると大変喜ばれたのですが、1ヶ月後に再会してみると「元の木阿弥」となっていました。
そこで、私からこの方にオフィスやご家庭での姿勢について細かくお尋ねすることにしました。すると、この方はオフィスにいる時間が長く、デスクの電話が左側にある関係で、身体を左側に傾けて(時にデスクに左肘をついて)仕事をしていることが分かりました。電話の習慣が、そのまま他にも影響しているようでした。
この方には、自然な姿勢が保てるようにデスクの高さ・イスの高さを工夫して、電話の位置を右側(反対側)に変えて頂きました。また、身の回りの方の協力も得て、身体が傾いているときに指摘をして頂くことにしました。1ヶ月後に再会すると、年来の肩こりや頭痛が嘘のようになくなったとのことでした。
心身統一合氣道は「自然な姿勢」で、かつ「左右均等」に稽古するので、姿勢の改善に大いに役立ちます。
私は20年近く大学の非常勤講師として心身統一合氣道を指導しており、年間で100名以上の学生と接しています。ここ十年で椎間板ヘルニアを患う学生が急増しています。学生の姿勢を見ると、必ずと言って良いほど左右どちらかに傾いています。体重をどちらかの足に載せるといった分かりやすい癖から、普段の姿勢がわずかに傾いているといった分かりにくい癖まで様々です。
授業では基本となる自然な姿勢を伝え、左右均等に技の稽古をします。すると、半期(半年)の授業を終える頃には、外科手術が必要な重度のものは除いて改善します。姿勢が如何に重要か、また癖は改善できることが分かります。
ここで一度、日常生活を振り返ってみましょう。
●姿勢は安定していますか。重い荷物も負担なく持つことが出来ますか。
●右側・左側、どちらかだけを使っている習慣はありませんか。
●立った状態・座った状態で左右どちらかに傾いていませんか。
不自然な姿勢、すなわち力んだり、虚脱状態になったりすることで氣は滞ってしまいます。また、左右のバランスが崩れることで氣は滞ります。
「自然な姿勢」でいることで全身に氣が通い、経営者として大切な「心身の健康」を保つこともできます。
「藤平信一ブログ」でも定期的に姿勢のことに触れています。この「社長の氣」と同様に活用頂けましたら幸いです。