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第58回(「10人中9人が嫌う」ことを提供する「明来」)
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楳図かずおが監修した「紅白の部屋」。
見渡す限り、紅と白のシマシマ模様
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AKB48が監修した「ファンタジーのお部屋」。
行く部屋、行く部屋がメルヘンづくし |
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暗く怪しく、ビルにロケット弾が刺さっている…。
これは、一棟丸ごと、世紀末をテーマにした「ZEUS 20××」
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その他にも斬新な試みが。
入居者に毎年各種サービスの
無料券をプレゼントする
「AKI倶楽部」を運営し、
「AKI45」というアイドルグループも結成
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一見、どこにでもあるマンションの一室。
が、玄関から中に入ると、壁も床も、見渡す限り、紅と白のシマシマ模様!
居間の壁には、楳図かずおさん直筆のイラスト。
部屋と部屋を仕切るドアを開けると、まことちゃん人形が飛び出してくる――。
ここは、大阪の不動産会社、明来がプロデュースした「楳図かずお監修 紅白の部屋」だ。
同社では、このような奇抜なデザインや仕掛けを施した「テーマパークマンション」をいくつも用意し、
一般居住者向けに貸している。
代表的なのは、「紅白の部屋」のような、著名人が監修した部屋。
たとえば、人気アイドルグループAKB48が監修した「ファンタジーの部屋」は、
玄関から 居間、寝室まで派手でメルヘンチックな部屋づくし。
岸部四郎さんが監修した「夜逃げ部屋」は、
借金で苦しむ岸部さんをモチーフに、隠れるための部屋が随所 に設けられている。
これらは中古マンションを1棟丸ごと改造する場合と、
1部屋だけをリフォームする場合の、2パターンがあるという。
この奇抜なマンションを企画し始めたのは、2007年から。
以前から明来では、個性的なデザイナーズマンションをプロデュースし、
自ら物件管理もしていた が、ライバル他社も競い合うように同様の物件をリリースしており、供給過多に。
人気に陰りが見え、家賃は下落する一方だった。
そこで、同社の藤田社長が行き着いた結論は、テーマパークマンションだった。
「10人いたら9人が嫌うけど、残る1人が強烈に支持する。加えて、代替えが きかない唯一無二の存在。
そんな物件をつくれば、家賃が高くても入居してもらえるはずだ。リスクは高いが、やってみる価値はある」。
そんな考えの元、試しにつくり出したのが、「ZEUS 20××」だ。
このマンションのテーマは世紀末。
外見は荒廃しきった雰囲気で、屋上にはロケット弾 が刺さっている。
「さすがに住みたい人は少ないのでは?」という声もあったが、
実際には入居希望者が殺到し、現在でも満室だという。
それ以後につくられたテーマパークマンションも、入居状況は好調だ。
これらのマンションの家賃は、相場の3から5割増しに設定しているが、9割以上が入居中。
現在では、順番待ちの状態だそうだ。
もちろん、広告塔としての役割も大きく、設立10年ほどの企業ながら、地場の近畿圏での知名度は高まった。
他の管理物件の入居状況も好調で、倒産に追い込まれる不動産会社が多いなか、
同社の2009年度の年商は前期比数%減に止まったという。
リフォームや著名人の協力費など、多額の費用がかかりそうだが、「そこは腕のみせどころ」と藤田社長。
同社では、今後も、プロレスのリングが設営された 「プロレス部屋」や戦国武将をテーマにした部屋など、
新たなテーマパークマンションを投入する意向だ。
「価値観の多様化」という言葉が慣用句のように使われているが、
明来の事例を見ると、多様化の度合いが一層高まっていることが伺える。
一部のマニアを狙う 戦略の有効度は増しているのかもしれない。
「無難な路線を狙ってはいないか?」。
自社のサービスが伸び悩んでいる時は、そう自問してみると、活路が開ける かもしれない。
(カデナクリエイト/杉山直隆)
◆社長の繁盛トレンドデータ◆
『ZEUS 20××』
大阪市北区長柄西
TEL:06-6261-0022(株式会社 明来)
http://www.aki-club.co.jp/
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