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- 第17回 クレームが出ないように、ハード面での最低基準としての「設計基準書」を作成し、会社の憲法として如何なる場合でも遵守させる事
先日、正月を迎えたと思いましたら2011年も、もう2月になり「 光陰矢の如し 」です。
2011年になってから、不動産市況は財閥系や金融系の超大手ディベロッパーは順調に売れていますが、やはり中堅ディベロッパーはかなりの苦戦を強いられるとの事です。
さて、今回はフェーズ2「 これから企業はどうしていくべきか 」の最後の項目『 クレームが出ないように、ハード面での最低基準としての「 設計基準書 」を作製し、会社の憲法として如何なる場合でも遵守させる事。 』のお話を致します。
前回の第16回は『 来訪客には、営業職だけの説明でなく技術職にも物件の特徴の説明をさせる事が大切。 』でした。今回はその呼び込んだ多くの来訪客に技術職が物件の特徴の説明をさせる為には重要な事で前回に関連した内容です。
私の約30年のマンション設計の経験から申し上げれば、マンションの設計は一言で言えば「 経験工学 」です。如何に今まで多くのクレームと対峙した事が、次設計するマンションに反映できるか…です。多くのマンションを設計している大手設計事務所はこの経験が豊富なのでハード面でのクレームが少ないのです。大手設計事務所でもマンション設計をほとんど行った事が無い大手設計事務所ですとクレームが出る確率は高いのです。
ハード面でのクレームで一番多いのが「 音の問題 」です。2番目が外観のデザインを重視した結果の「 雨漏り 」です。
これらのクレームはほとんどが経験不足から生じています。クレームが多く出ますと最近は「 ブログ 」や「 ツイッター 」に書き込まれ、ディベロッパーの信用をかなり落とす事になります。信用を築くには最低10年かかりますが、信用を落とすのは一瞬です。
現在、 事業主が中堅ディベロッパーのマンションは販売状況が芳しくないのです。この様な時に信用を落とせば死活問題に発展する可能性が有ります。
そこで、大手ディベロッパーとハード面では対等な良質なマンションを作るには「 設計基準書 」が必要なのです。私も現在、中堅ディベロッパーさんより「 設計基準書 」作りの業務を依頼されて技術職の方と一緒に行なっています。
マンションの「 設計基準書 」にはマンション用地購入検討の時に設計事務所に書かせる「 ボリュームチェック( その土地にどれだけの大きさ、面積のマンションが建てられるかの検証図面 )設計基準書 」、商品企画時の「 基本計画設計基準書 」そして、実施設計図書作製の為の「 実施設計・設計基準書」と少なくても3種類の「 設計基準書 」が必要です。これらを今、白紙の状態から作製致しますと、最低でも半年以上かかります。
そこで、私の提案は中堅ディベロッパーの社員の方の中には結構、大手ディベロッパーから中途入社の方が多いのでその方達に、以前勤務していた大手ディベロッパーの「 設計基準書 」を入手させ、更にその内容をもっと進化させるのです。もう一つの提案としては、マンション設計を多く手がけている大手設計事務所に設計を依頼し、その設計事務所のマンション「 設計基準書 」を受領するのです。
中堅ディベロッパーが今から上記3種類の「 設計基準書 」を一日でも早く作製するには、この様な方法しか有りません。
そして「 設計基準書 」を作成しても、今後各物件でそれを遵守させませんと、無駄な物になってしまいます。その為には「 設計基準書 」の中の各項目の右側に欄を設け、遵守したか、しないかを○×( まるばつ )で書き込ませて、×の場合はその理由が記入できる様にするのです。そして更に×の項目の理由を営業の方と技術職の方で協議し、営業が承認できなければ再度その項目の内容を検討させて○にさせるのが大切です。
折角「 設計基準書 」を作成しても、その内容を遵守しなければ、何の役にも立ちません。
ですので、「 設計基準書 」を作成したディベロッパーは、「 設計基準書 」は自社のハード面の憲法として扱い、絶対に「 設計基準書 」を遵守させ×が付いた項目は役員クラスの承認を取る事としなければ存在感が無くなります。
そして「 設計基準書 」は年に1回、営業の方と技術職の方で見直しを行って更に良い「 設計基準書 」にする事が大切です。
この「 設計基準書 」が有れば、マンションの設計を中小の設計事務所に依頼した場合でも「 設計基準書 」渡し遵守させれば安心です。
また、中堅の建設会社に施工を依頼する時に工事契約書に添付し「 設計基準書 」を守らせれば大手ディベロッパーに負けない良質なマンションを建てる事ができます。是非、実行して下さい。
尚、次回はフェーズ3「 顧客の声を知る事が大切 」になりますので御期待下さい。
以上
碓井民朗