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第25回 設計事務所は「意匠」「構造」「電気設備」「給排水設備」「空調換気設備」「積算」全ての部署がある事務所でなければ良いマンションはできない

売れる住宅を創る 100の視点

さて、今回はフェーズ4「 設計事務所、建設会社、売主 」の第二の項目『 第25回 設計事務所は「 意匠 」「 構造 」「 電気設備 」「 給排水設備 」「 空調換気設備 」「 積算 」全ての部署がある事務所でなければ良いマンションはできない。 』のお話を致します。
 
前回の第24回はフェーズ4の「 設計事務所、建設会社、売主 」の最初の項目で『  設計事務所の受注に占めるマンションの割合が高い設計事務所を選定する事。  』でした。
 
今回の第25回は第24回の内容に更に設計事務所選定の基準の重要さの御説明を致します。
 
前回も申し上げましたが、多くのディベロッパーの方々は、設計事務所の選定は上司や用地取得部署からの申し送りで決めており、仕事の進捗状況は早いのですが、計画内容はディベロッパーの指示通りの10年一律同じプランでほとんど進歩のないマンション設計になっています。その結果が完成しても在庫の山なのです。
 
マンションや戸建の設計は如何に多くの経験を積んでいるかが、成功の鍵です。その点では、大きな設計事務所で受注に占めるマンション設計の比率が高い設計事務所ですと、過去に何百棟もマンション設計を行った経験があるので、安心できます。
 
前回コラムで書きました様に、特にマンションの設計事務所の選定は無料で「 ボリュームチェック図 」( 購入予定地にどれ位の規模のものが建つかの検証図 )を受け入れる様な、建築家としてのプライドの無い設計事務所とのしがらみは切るべきです。
 
さて、今回は更に売れる良いマンション設計をしてもらう為には、設計事務所選定の重要な基準を具体的に御説明を致します。
 
大手設計事務所は所員数が300人以上で、準大手設計事務所は所員数が約100人以上300人未満です。
 
設計事務所で、この位の人数の所員が居ませんと「 意匠設計 」のみ自社で行い、大切な「 構造設計 」「 電気設備設計 」「 給排水衛生設備設計 」「 空調換気設備設計 」や「 積算 」の仕事は全て外注事務所に依頼する事になります。
 
私のマンション設計歴30年の経験で申し上げれば「 意匠設計 」のみ自社で行って、大切な「 構造設計 」「 電気設備設計 」「 給排水衛生設備設計 」「 空調換気設備設計 」や「 積算 」を全て外注事務所に依頼していては、売れる良いマンションを設計するのは、不可能に近いのです。
 
その理由は「 意匠設計 」がディベロッパーと商品企画会議で打ち合わせをし、その内容を具現化してプランニングする時には、まず密に「 構造設計 」との打ち合わせがとても大切なのです。
 
処が、設計事務所自社内に「 構造設計 」部署が無くて、外注事務所に依頼していますと、 「 意匠設計 」部署が良い売れそうな住戸プランを作成致しましても、外注の「 構造設計 」事務所との意志の疎通が迅速に図れませんので、とんでもない所に、大きな柱、大梁や小梁が配置されてしまう事が生じてしまうのです。
 
中堅ディベロッパーの売主の分譲マンションでよく見かけますのが、住戸プランは良いのですが「 構造設計 」に上記の事が如実に現れています。私から見れば、折角良い住戸プランを作成したのに、柱、大梁や小梁の位置をちょっと工夫すれば良かったのに…と思われる物件が多々見受けられます。
 
また、同様に住戸プランは良いのですが「 給排水衛生設備設計 」「 空調換気設備設計 」が外注事務所で、それらとの打ち合わせが密にできておらずに、とんでもない所に給排水管を通した結果、住戸内の見せ場に下がり天井ができたり、排気ダクトが居室の中央に通って大きな梁型が出現しているのです。
 
「 電気設備設計 」との打ち合わせが密に行われていませんと、大きな家具( ベッド等 )を配置したら、コンセントが家具の裏になって使えない様な事態が起こりかねません。
 
更に絶対に必要な部署は「 積算 」です。「 意匠設計 」「 構造設計 」「 電気設備設計 」「 給排水衛生設備設計 」「 空調換気設備設計」各部署が基本設計から実施設計に移行する前に、基本設計図書と仕上げ表を「 積算 」部署に持って行き、工事費の概算見積書を作成してもらう事が大切なのです。
 
「 積算 」部署から出た工事費概算見積書の工事金額がディベロッパーより最初に申し伝えられている予定工事費より15%以上高ければ、実施設計に入る前に基本設計の見直しをしなければ、大変な事になります。「 積算 」部署の人間も参加してもらって社内で「 意匠設計 」「 構造設計 」「 電気設備設計 」「 給排水衛生設備設計 」「 空調換気設備設計」部署の人が一堂に会して、工事金額がディベロッパーより最初に申し伝えられている予定工事費より概算総工事費を10%以上、下げる打ち合わせが可能なのです。
 
その理由は、その会議で概算工事費が10%程度下がっても、実施設計を進めていき、設計図書一式完成後に、ゼネコンが本見積もりを致しますと、どういう訳か、ゼネコンの工事費見積書の総工事費では約10%位上がってしまうのです。
 
そこで「 積算 」部署が社内に有るメリットは更に、ゼネコンとのネゴ折衝で本領を発揮してくれるのです。特に建築業界では大手設計事務所や準大手設計事務所は、力関係に於いてヒエラルキーがゼネコンよりも上位なのです。まず最初の折衝はゼネコンに仕様・仕上げ等を落とさせずにVE( バリューエンジニアリング:機能を落とさず工法提案で工事費を下げる事。)で総工事費の見直しをしてもらうのです。このVEで約7%~10%程度、工事見積金額が下がりましたらOKです。この折衝で5%程度しか下がらない場合は「 積算 」部署は各建築資材の単価調整を致します。各建築資材の定価( 上代価格 )はカタログ等に書かれていますが、実際に現場に搬入される価格( 下代価格 )はかなり安いのです。ですのでその辺の折衝を致しますと、また工事費の金額が約3%~5%位は下がります。
 
大手や準大手ゼネコンの工事見積書の各建築資材の書き入れ価格は、たいてい上代価格と下代価格の中間です。この書き入れ価格を「 積算 」部署が如何に下代価格に近づけるかが彼等の力量です。「 積算 」部署が社内に無く外注ですと、この折衝はかなり甘くなる傾向があります。
 
ちなみに、建設業界ではゼネコンの規模が大きい程、全く同じ資材が定価の約4割程度の価格で建設現場に搬入され、取引されているのです。以前、私の様な建築家はメーカーの営業担当者に「 下代金額を定価の半値八掛け( 50%×80%=40% )で現場に入れてくれれば採用するよ。 」というのが、常套句でした。
 
以上が「 意匠設計 」部署だけでなく「 構造設計 」「 電気設備設計 」「 給排水衛生設備設計 」「 空調換気設備設計 」や「 積算 」部署が社内に有る大きなメリットです。
 
中堅ディベロッパーの方はよく、大手や準大手設計事務所は「 設計及び工事監理 」の金額が中小の設計事務所より少し高いので依頼できないと申される方がいらっしゃいますが、ゼネコンとの工事費のネゴ折衝で下がった金額で埋め合わせできます。
 
設計事務所の選定の時には今回のコラムを参考にして決定して下さい。
以上
 
  
碓井民朗

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