震災、原発、電力不足の三重苦で、多くのビジネスが落ち込む一方で、思わぬ需要が伸びている。
そんな震災後に活況を呈している意外なビジネスをご紹介しよう。
変化はチャンス!変化あるところ、必ず商機あり。
業種や職種が異なり、直接、仕事に結びつけられないビジネスモデルでも、
きっと、そこには誰にとっても、新たなビジネスのヒントがかくれているに違いない。
さあ、≪震災特需≫をものにしよう!
経済活動を活発化することこそが被災地を元気にし、日本を元気にすることにつながるのだ。
◆不安感から『震災婚活』『震災婚』が急増!
「震災の時、近くに誰も自分のことを心配してくれる人がいなくて、さみしく心細かった」
「余震が続く中、一人で家にいるのが怖い」という女性の声をよく聞く。
読売新聞が運営する女性向けサイト「大手小町」でも、
「家族の安否確認をする人たちを見てうらやましかった。つくづく自分は独身なんだと痛感した」
という声に共感の書き込みが殺到した。
草食系が多い昨今の男も、さみしさや恐怖をつのらせ、愛する人と一緒にいることで安心感を得たいという人が増えている。
婚活サイト「エキサイト恋愛結婚」では、入会者数が急増。4月初旬、男性は0.3%増、女性は10.9%増となった。
大手結婚相談所の「オーネット」でも、
3月末から成婚した会員が前年同期比で20%も増え、4月の資料請求も10~15%も増えた。
また、高額品の売れ行き不信で苦しんでいる百貨店だが、
4月、婚約指輪の販売量が前年比で約40%増、結婚指輪は25%増となっている。
インターネット通販大手の楽天市場でも、震災後、マリッジリングの売上が、前年より25%も伸びた。
米軍のグッズを販売する東京・御徒町の中田商店では、2枚セットの兵士の認識票ドッグタグが売れている。
2人が首からかけた半分ずつのタグを合わせると1枚になるからだ。
阪神大震災の後や、アメリカの9・11テロの後も結婚が増えた。
余震も原発もなかなか収まりそうにない中、同様に今後も、『震災婚活』『震災婚』が増加するに違いない。
婚活関連、結婚関連市場はすそ野が広い。様々なビジネスに結び付く。
◆子どもを外で遊ばせない『家庭内シェルタービジネス』が成長
続く余震と、福島第1原発からの放射能を恐れて、子どもが外で遊ぶ時間を減らそうという親が増えている。
幼稚園や学校でも、雨の後の砂遊びを控えたり、外での運動や屋外プールでの水泳の時間を減らす動きもある。
そんな中、家庭教師の需要が急増している。
家庭教師派遣業のトライでは、震災後の生徒数が前年比14%増と急増。
学研の家庭教師部門への問い合わせも増えている。
このにわかに湧き起った家庭教師の人気は、子どもを屋外に出したくないと思う親心から来ている。
また、日本経済の先行きを憂い、世界中どこででも仕事をして生きて行けるグローバルに活躍できる人に育てたい
という願いも見え隠れする。
家庭内における教育産業の分野では、
インターネットを通じたネット学習やパソコンで学べるDVD学習なども需要が見込まれる。
一方、外で遊ぶよりは家の中の方が安心だと、
携帯電話や携帯ゲーム端末、テレビゲーム端末やパソコンを使ってゲームで遊ぶのに、
今までよりも長い時間を、親が認めるようになっている。
しかし、外に出ないと運動不足になるため、しばらくほこりをかぶっていた、
アクションゲームも楽しめる任天堂の「Wii(ウィー)」を引っ張り出す家族も増えている。
今後も、子どもが家の中で楽しみながら体力づくりができるマシンや遊具のビジネスは成長の可能性が高い。
奥さんが西日本出身の家族は、奥さんが子どもを連れて実家に帰っているケースも多い。
また、富裕層の家族では、関西や九州、沖縄などに引越し、
父親だけ東京に残って、週末に家族の元に帰るという生活パターンもよく耳にする。
しかし、誰もが簡単にそんな「震災・原発疎開」を実行できるわけではない。
福島原発から300キロも離れた、神奈川県の南足柄市で、5月9日に採取されたお茶の生葉から、
暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された。
東日本においては、これからまだしばらく、
子どもを外で遊ばせない『家庭内シェルタービジネス』が秘かに成長を続けるだろう。
◆“人生のたたみ方”“人生のしまい方” に関する『終活ビジネス』
曽野綾子さんが著された、『自分の始末 』~人生をいかに終えるか~が、人気を呼んでいる。
いざという時に備えて、遺言書を作成したり、書き換える人が増えている。
また、震災後、家族や友人へのメッセージをビデオに録画したり、エンディングノートを行政書士に託したという話も聞く。
今回の震災は、資産の安全・安心ということを日本中の人たちが考え直す機会となった。
家族の大切な写真や思い出の品、先祖伝来の大切な物品、書画骨董などを、
なるべく安全な、銀行の貸金庫や貸倉庫などに預ける動きも広がっている。
そして、東日本各地では、震災で家が全壊したり、半壊した人が相次いだ。
半壊したり、大きく破損した際には、場合によっては、新築するのと同じくらいの修繕費がかかる場合もある。
また、千葉県の浦安市などで起った液状化をはじめ被害の状況によっては、
建物や土地の資産価値が大きく低下してしまう可能性もある。
そういった様々な事態を想定して、資産のポートフォリオをトータルな視点から見直す人が増えている。
震災は、不要不急の不動産や物品、事業の整理・売却を考えるきっかけともなったに違いない。
それから、忘れてはならないのが、墓石の耐震強度に対して注目が集まったことだ。
震災の影響で、東北はもとより首都圏でも、墓石や灯籠が土台から大きくズレたり倒壊したりする被害が出た。
宮城県では3~4割、茨城県でも2~3割の墓石や灯籠が何らかの被害を受けた。東京都でも各地で石のズレなどが起った。
墓石の修理費用は意外に高い。石のズレの修復だけで20~30万円。
土台を含めた石の交換は、100~200万円もかかる。
そのため、耐震性の高い墓石が人気を呼んでいる。
今までは、ボンドで接合したり、石に留め具を打ち込んで連結ボルトでつなぐ方法が一般的だった。
しかし、東京・板橋の小泉石材では、阪神淡路大震災の教訓から研究を重ね、
H型の留め具を使用し、鍵穴を作ってそこにボルトを入れ、止水セメントを流し込むKI式耐震工法という技術を開発した。
この工法で建てた墓石は、今回の震災でも、福島県や千葉県、埼玉県などでも無傷だったという。
高齢化社会ならぬ、既に高齢社会に突入している老人大国の日本においては、
人生をいかにして“たたむ”か“しまう”かに関して大きな潜在マーケットがある。
しかし、東北の被災地では、未だ行方不明の方々も数知れない。
また、亡くなった方々を火葬・埋葬することさえままならない状態だ。
『終活ビジネス』は、ビジネスとはいえ、お金儲けの視点からだけで考えてはならない。
人を思いやる気持ちが何よりも大切である。
◆我が家の安全性を確かめる『土地のルーツ検証ビジネス』
震災を機に、住宅選びの視点が大きく変わった。
住宅の耐震性のみならず、その家が建つ土地がもともとどんな所だったのかを気にする人が増えている。
首都圏で最も人気の高い住宅地の一つだった、千葉県浦安市の湾岸地域の一部が液状化によって大きな被害を受けた。
道路が陥没したり、マンホールが2メートルも飛びだしたり、建物が大きく傾いたりした。
同市では、千葉県の県会議員選挙を、被災を理由に順延するほどだった。
また、春に人気を呼んでいた浦安の潮干狩りが、大潮になっても潮が引かないなど、東京湾の三番瀬の一部が沈下した。
湾岸エリアのみならず、千葉県我孫子市や埼玉県久喜市などの利根川に近いエリアでも激しい液状化現象が起こった。
内陸部にあっても、昔、沼や田んぼだった土地では、大きな地震の際に液状化を引き起こすことも少なくない。
そういった状況を受けて、さいたま市にある、埼玉県立浦和図書館には、
これまで一部の愛好家にしか関心を持たれなかった明治時代の古地図を閲覧する人が急増している。
同図書館には、約2000冊の古地図、地形図500枚以上が収蔵されている、
その中にある、明治13~19年(1880~1886年)の関東地方を記した「迅速測図」の復刻版を見ると、
液状化の起きた久喜市の南栗橋地区周辺は、水田を示す黄色に塗られた部分が多く、
葦(あし)が生える湿原だったことを示す地域もある。
江戸・東京の都市計画の歴史は、埋め立てに次ぐ埋め立てである。
国道15号=明治に造られた「一號國道」、つまり、元の東海道の外は、もともとはほとんど海だった。
品川エリアも御殿山の下は明治までは海だった。
富士山の火山灰による関東ローム層と埋め立てで造られた江戸・東京の地盤の多くはあまりにも軟弱である。
実際の地盤の強弱は、現在の住宅地図だけを見てもまったくわからない。
今後は、資産価値を証明するために、古地図も付けた物件紹介が増えるに違いない。
首都圏の発展のためには功罪があるが、ニーズは高まっているし、
いつ起きてもおかしくない関東大震災や東海地震が来た際に、
被害を最小限に食い止めるためにも、『土地のルーツ検証ビジネス』は意味がある。
≪震災特需≫の中には、一時的に活況を呈しているビジネスもある
また、保険のように、不安ビジネスの側面も大きい。
しかし、日本列島に住み、事業を行なう限り、地震とともに生きて行くより他はない。
そして、原発の脅威もそう簡単に去るはずがない。
地震に対する危機管理、放射能に対する備えを踏まえた、
国民の豊かさと日本経済の持続的発展を実現するビジネスモデルを構築して行かねばならない。