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第64回
「狭き門から入れ」の本当の意味とは?
~新たな入門、門出の季節に贈る言葉の真髄~

次の売れ筋をつかむ術

 

 
春は新たな入門、門出の季節だ。

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狭き門から入れ。滅びに至る門は大きく、その道は広い。
そして、そこから入って行く者が多い。
命に至る門は狭く、その道は細い。
そして、それを見い出す者は少ない。
(新訳聖書マタイ伝七章十三節・十四節)
 
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※英語口語体
Enter through the narrow gate.
For wide is the gate and broad is the road that leads to destruction, 
and many enter through it. 
But small is the gate and narrow the road that leads to life, 
and only a few find it.
Matthew 7:13-14
 
この有名な一節は、学校の入試や就活(就職活動)などの難関の試験や関門を突破すれば、
その先には幸せの道が開けているという意味でよく使われる。
 
入園・入学・進学・進級・就職・入社・入会・異動・昇進・転勤・配転・定年など、
人は生きて行く間に様々な門をくぐる。
 
若い時には人生の門戸は大きく開かれていたのに、
齢を重ねるに従って、迎え入れてくれる門の数も減り、
ますます「狭き門」となって行く気がする。
 
しかし、本当にそうなのだろうか。
 
 
●「登龍門」と「狭き門」の本来の意味はまったく異なる
 
日本において、この「狭き門」の例えが人口に膾炙したのは、
同じ「門」という言葉を使った慣用句の「登龍門」と重ね合わせたからかも知れない。

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しかし、流れの急な龍門を登り切った鯉が龍に生まれ変わるという中国の伝説から、
門を突破すれば立身出世が待っているとする「登龍門」と「狭き門」とは
本来の意味合いはまったく異なる。
 
この言葉は、そんな世俗的な成功を説いているのではない。
 
「狭き門から入れ」とは、財産や地位や名声や知識や美貌や武器など、
この世のものを持ったまま天国の門は通れない、それらをすべて脱ぎ捨てた者こそが、
「狭き門」をくぐり、天国に続く細い道に進めるという意味だ。
 
 
●「狭き門」の本来の意味を体現した茶室の「にじり口」
 
実は日本文化の中に、「狭き門」の本来の意味を体現したものがある。
茶室の「にじり口」だ。

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「にじる」とは、ひざを曲げて畳を擦りながら、両手のこぶしで進む動きを指す。
 
「にじり口」は、侘び茶を完成させた千利休が、河内の枚方(大阪府・枚方市)の淀川の畔で、
船上の漁師が船小屋に体をかがめて入る様子を見て着想したと言われる。

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高さと幅が二尺強(六〇センチ強)のほぼ正方形のこの狭い入口からわずか二畳の茶室に入る時には、
どんなに身分や地位が高い人でも、頭を下げて、にじらねばならない。
 
いかに屈強な武士も入口の脇にある刀掛に刀を預けなければ入れない。
ひとたび茶室に入れば、世間における立場を離れて、皆、平等になる意味を持つ。
 
 
●茶道と聖書の一致は、実は偶然の産物ではなかった?!
 
この茶道と聖書の一致は、実は偶然の産物ではなかったという説もある。
 
茶道の成立とキリスト教伝来は同時代だ。
 
利休と親しかった七哲と呼ばれる、細川三斎、古田織部、蒲生氏郷、高山右近らの中には
キリスト教の理解者が多かった。
 
不易流行を旨とする利休が当時最新の聖書の言葉を知っていて、
狭き門=にじり口を設けたのだと考えられなくもない。

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しかし、その意味するところは、それ以前に日本に伝わっていた仏教が説く、
六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)から生まれる欲への執着を捨てよという
「無執着」(むしゅうじゃく)の教えと相通じるものがある。
 
 
●新たな門をくぐった貴殿のご隆昌を心よりお祈り申し上げます!
 
私のような煩悩だらけの凡人には「狭き門」の入門許可はとても出そうにない。
 
せめて、一日一日、瞬刻瞬刻を、新たな入門、門出だと思い、虚心坦懐に、
残された一つ一つの門をくぐって行きたい。

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今春、新たな門をくぐった貴殿のご隆昌を心よりお祈り申し上げます!
 
 

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