賃金管理研究所 所長 弥富拓海
年2回の賞与を公正に配分するためには、従業員一人ひとりの勤務成績の確認が必要であり、そのためには6ヵ月ごとの成績評価が制度として不可欠です。
この成績評価を定期的に実施するためには、評価を担当する管理職の皆さんに部下の勤務成績(成果とプロセス)を確認することの大切さをしっかり理解してもらわなければなりません。
賃金管理研究所では、成績評価の目的と手順を評価者全員に正しく理解してもらうために「成績評価報告書記入要領」を用意しています。しかし、一度は成績評価制度の趣旨を理解したとしても、年月を重ねれば、ラインの管理者も変わりますから、評価に対する考え方や採点方法にブレが生じてもおかしくありません。
納得感の高い評価制度を維持していくには勤務成績を評価する目的と手順を繰り返し学習してもらわねばなりません。社内の管理職研修会の折に、当社の担当コンサルタントに講師の依頼をいただくことも少なくありません。そうした研修の場で、寄せられる質問の中から一例を選んでみました。この基本的な疑問に回答してみたいと思います。
質問.
評価が「一方的だ」「曖昧だ」「具体的でない」という不満に対してどう対処したらよいか?
回答.
「一方的」だと言っても評価は他人がするものです。自分で自分を評価しただけでは単なる自己満足であり、組織の一員として正しく評価されてこそ価値が生まれます。
「曖昧」と言っても、あなたの思い通りの評価基準は他人には作れません。各部署で社員たちが異なる仕事を担当し、それぞれの「成果とプロセス」の評価です。できたところで他課の管理者は納得できません。
「具体的でない」と思えるかも知れません。しかし賞与の公正な配分を目的とする成績の評価です。評価基準が不統一では次の部署間の調整作業に進めませんし、責任等級ごとの評語SABCDが確定できなければ、納得性の高い賞与の個別配分は実現しません。
成績評価とは目立つ人、スタンドプレイを賞賛する制度ではありません。どんな職場であっても、日々の業務の積み重ねが目標とする成果に結びついています。成績評価とは過去半年間を単位に、社員の日々の努力・継続的な仕事品質の高さと、その積み重ねとしての得られた成果の大きさを確認し、組織上の上長に報告する制度なのです。
成績評価の信頼性を高めるためには、部署や職種がちがっても使いやすく普遍的な評価基準書が必要なのです。非監督者用の成績評価基準書では評価要素は(1)服務(2)受命段取り(3)就業活動(4)業務能率(5)成果で構成されています。
この5つの評価要素はさらに4つの着眼点に分けられており、良=10点を中心に秀=14点から劣=6点の間で同じ等級にいる部下全員を採点評価します。それぞれの着眼点を読み、良=10点をイメージして、過去半年間の部下一人ひとりの仕事の進行具合と成果を確認し、順次採点して行くことが直属上司としての責務であり、仕事力です。
今回取り上げた質問以外にも評価開始から評語決定までのプロセスには、おさえておきたい要点がまだまだあります。いずれコラムで取り上げようと考えています。