「我が社の明日を、誰に託すか」それは永く繁栄し続けなければならない宿命を背負う企業の実力経営者にとって最大のテーマであり、昇格昇進候補者の選考にこそ、真の能力主義は貫かれていなければなりません。
●時が経つに従って階層社会のすべてのポストはその職責を
全うしえないレベルの従業員(下位等級までの仕事ぶりは評価された)によって
占められるようになる傾向がある。
●それでも仕事はまだそのポスト(職位)で無能のレベルに達していない
従業員によって遂行される。
生産性の低い組織を皮肉たっぷりに例示したような話ですが、これはカナダの階層社会学者ローレンス・J・ピーターが唱えたピーターの法則の有名な一文です。
「企業は仕事の集合体であり、実力幹部を中心に生き生きと能率良く躍動する若々しい生命体的なもの」という視点に立てば、組織上位の責任ある仕事になるほど、より高度な仕事力と先見力そして判断力が求められます。
「誰にその責任ある仕事を委ねるのが一番賢い選択か」が常に問われるだけでなく、組織として、やるべき「仕事の権限と責任と義務」を明確にしておくことも必要です。高学歴だから、勤続が永いから、良い人だからといった理由で一番無難なレベルの人を選んではいけないのです。補佐役がいなければ職責をまっとうできない。そんな程度の仕事力しか身につけていない上級管理職など論外であり、無難に勤めればみんな偉くなれる会社はピーターの法則の予言どおり潰れてもおかしくないと言うことにもなります。
「高い給料さえ出せば優れた人材がいつでもスカウト採用できる」と豪語する経営者もおられました。しかし、それは高コストの割に失敗する確率の高い、極めてハイリスクで危険な話です。
なぜなら、企業にとって明日を託すに値する人材とは時間をかけて我慢強く育てた逸材のことであり、実力に相応しい活躍で期待に答えてくれる社員のことだからです。
より重大な、責任ある仕事を余裕で処理し、難題にも果敢に挑戦し、良好な結果で期待に答えてくれる。そんな優れた上級社員の仕事力を日々評価し、実力管理職に育てあげる努力が企業には必要なのです。つまり真の能力主義は昇格昇進者の選考にこそ貫かれていなければならないのです。