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マネジメント

第89回 『収入と実力』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

以前、外資証券会社の調査で、日本には金融資産1億円以上の富裕層が約130万人以上いるとレーポート
していた。あるところにはあるものだ。

「だけど、人生カネがすべてじゃないもんな」という声も聞こえてくる。
あるレベルを超えると、お金と人の幸せは相関関係がなくなるということもいえるだろう。

日本や世界の富豪の事件を見聞きするたびに、背後に、家族の存在が見えてこないことが多いのを不思議に思う。
「貨財も多きは得を傷(やぶ)る」という。
お金は、たくさんありすぎても人の心を惑わせ、家庭をないがしろにする生き方につながりやすいのだろうか。
だからチャップリンも、some moneyと、someをつけているのかも知れない。

だが、よく、「私は好きな仕事ができれば、お金はどうでもいいんです」という人がある。
私は、そうした考え方には、どこか欺瞞を感じる。共感できない。
お金がなければ、食事を欠くようになる。貧しいところから、優れたアイデアや知恵は生まれにくい。
これはある程度、真実なのだ。

例えば、万葉集の貧窮問答歌で、「風まじり夜の 雨降る 雨まじり 雪降る夜は 術もなく…」と歌った山上億良は、
実は高級貴族であり、遣唐使のお供で唐に渡った経験さえあるエリートだった。


大学生の親のフトコロ具合を調査すると、東大の学生の親の平均年収が最も高かったという報告もある。
東大入学がベストな教育だというつもりはないが、親にある程度の経済力がないと、そこそこ質の高い教育も
してやれないという目安にはなるだろう。

いま三十代の人が年金を受け取る年齢になる頃には、年金だけで豊かな老後をおくるのは難しい。
そうしたことも含め、仕事をやめたあとのマネー計画も視野に入れ、some money を確保できるだけの計画も
立てておくべきだ。
それが、社会的にも、個人としても、責任のある生き方だといえるだろう。


作家の重松清氏は、「お金にならない原稿を書いたことは一度もない」と言っている。
作家として世に出る前はライターとして原稿を書いていたそうだが、その当時も、「一枚でも多く原稿を書いて、
一円でも多く稼ごう」と思っていたそうだ。
あっぱれなプロ根性というべきだろう。

私は、ビジネスマンであっても、基本的な精神構造は、重松氏とイコールであるべきだと考えている。
市場経済理論からいっても、仕事の対価が高いことイコール価値ある仕事をしていると社会に認められた
ことを意味している。


some money が具体的にいくらかは、「人それぞれ」だろう。生き方の価値観がからむから、金額は自分で
割り出すほかはない。
「一日に玄米四合とみそと少しの野菜」で満足だという人もあれば、「たまに刺身も肉も食べたい」という人も
あるからだ。

いずれにしても、金がなければ生きてはいけない。これは厳粛なる事実だ。
まだ、老後を考える年齢ではないという人もあるだろう。
だが、一生涯を支えるマネー計画は、遅くとも40歳くらいまでには考え始め、行動し始めないと間に合わない。

食べていく金ぐらいなんとかなる、とお金をバカにすると、逆におカネにバカにされ、やがておカネに困る
ようになる。
「お金ですべてが買える」とは思わないが、「お金がなくてもなんとかなる」とも思えない。
求められるのは、バランス感覚というべきだろう。


お金について考えを巡らすときに大切なのは、金額の多寡よりも、お金についての哲学や理念の確立だ。
お金はなければ困る。だが、金儲けそのものが人生の目的とはなりえないことを頭に刻み込んでおくべきだ。

プロのビジネスマンになれば、世間並み以上の収入は得られて当然だ。
それを欲しない人は、自分のプロ度に誇りが無いといわれても仕方ない。

「空の財布は重い」と云うユダヤのことわざがある。
空の財布は、生活と心に重い負担となるのだ。

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