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人事・労務

第56話 年ごとのベースアップから給与制度を守る加給の役割

「賃金の誤解」

 2020年東京オリンピックへの助走がはじまり、近未来に期待が膨らむ新しい年がスタートしました。
 
 昨年、政府が経済界や労働界のトップと雇用問題などで意見を交わす「政労使協議」の会合において、安倍首相は「経済はデフレ脱却の方向に向かっている。産業界、労働界も大胆に取り組んでほしい」と述べ、賃上げや雇用拡大への協力を強く求めました。
 
 今年は消費税率が3%上がり、加えて2%のインフレターゲットが現実になれば、個々人の可処分所得は、その分の補填(ベースアップ=ベア)がない限り、目減りしてしまいます。そのような状況を踏まえれば、政府の賃上げ要請は当然であり、2014年春闘は定期昇給にベアを何%上積みするか、労使の攻防で盛り上って当然ではないでしょうか。
 
 経団連の米倉弘昌会長は「景気の好循環を実現するため、改善した業績を賃上げに結びつけてほしいという政府の要請を受け、業績が改善すれば報いたい」と答え、同時に「賃上げの中身については労使交渉で協議すべきものであり、ベアについては個別企業の判断に委ねる」と強調しています。
 
 一方の連合は例年の定期昇給に加えて、5年ぶりに1%以上のベアを要求することを柱とした2014年春闘方針を正式決定し、春闘の準備が整いました。
 
 業績の改善を根拠に相当数の企業が、ベアを実施することになるでしょう。
 
 一部の企業では、定期昇給とベアを混同して実施されるきらいがありますが、(1)定期昇給と(2)ベアの違いと計算手順を正しく理解しておかなければ、運用実務は混乱してしまいます。
 
(1) 定期昇給のやり方:
 定期昇給は、新規学卒者を迎える毎年4月に実施するケースが一般的です。この昇給額の決定に際しては、仕事力の伸びを評価し、昇給評語 (SABCD)を決め、それぞれの評語に応じた昇給号数を現在の号数に加算し、給与規程に定めた本給表を用いて、新年度の基本給額を決定します。
 
 例年であれば、この定期昇給を責任等級ごとに実行するだけで済んだのですが、今年はベアの手順についての理解も必要となります。
 
(2)ベアの上手な加え方:
 ベースアップ(ダウン)とは物価上昇や労働市場の推移、あるいは企業業績等を反映させるために定期昇給実施後の新年度の本給に定率または定額を加算(減算)することです。
 
 毎年、ベアのたびに本給表を書き換える方法もありますが、賃金管理研究所は不安定なベアによる基本給の変動分については本給から切り離し、加給として別管理することをお薦めしています。なぜなら別枠で管理することで給与規程に定められた昇給実務(従業員との約束)を物価や世間に煩わされること無く、長期に安定運用できるからです。

 

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