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人事・労務

第11話 監督署に指摘される管理職と役付社員

「賃金の誤解」

先日、ある会社の社長さんが、私のもとへ相談に来られました。
 
 話しを伺うと、「知り合いの会社に労働基準監督署から監督官がきて、いろいろ調査されました。結果、特に管理職を含む役付社員の手当金額につ いて指導があり、管理監督者の範囲と処遇について改善命令を受け、手直しに苦労しているそうなのです。そうした事態を聞くと、私も急に心配になり、先生に 相談させていただきたくなりました。」とのことでした。
 
 労働基準法32条では、
  ・ 使用者は労働者に、休憩時間を除き1週間について
   40時間を超えて労働させてはならない。
  ・ 使用者は1週間の各日については労働者に、
   休憩時間を除き1日について8時間を超えて
   労働させてはならない
と定めています。
 
 これが法定内の8時間勤務です。そして、労働基準法37条で、その8時間を超える残業および法定外休日は「25%の割増」を、毎週1日の法定 休日(多くの企業の日曜日)に勤務した場合には「35%の割増」賃金を支払うよう企業に義務づけています。
 
 ただし、労働基準法41条で監督や管理する地位にある「管理監督者」については、労働時間、休憩および休日に関する規定を適用しないと定めら れています。これにより、時間外労働や休日勤務の割増賃金の支払い義務が免除されています。
 
 労働基準監督署の監督官が、役付き社員が41条に定める管理監督者かどうか判断するとき、その役割の実態が
  ①労働条件の決定や労務管理について
   経営者と一体的な立場であること。
  ②勤務時間の自由裁量があって
  ③職務に見合う給与や賞与等でふさわしい処遇を
   受けているものでなければ管理職とは認めがたい
として指導します。
 
 従ってそれぞれの企業が人事管理上、営業政策上の必要から任命する職制上の役付者すべて管理監督者と認められる訳ではありません。多くの企業 が労働基準監督署から指導勧告、時に改善命令を受けるのはそうした理由からです。
 
 今回来られた社長の会社では係長には5千円の役付手当を、課長代理には2万5千円、課長には3万円の役付手当を支給しており、課長代理以上の 役職者には残業及び休日勤務の手当は支給していないとの事でした。
 
 まず課長代理の役割が管理職かどうかについては、ほとんどの場合①および②の判断で41条に定める「管理監督者」とは認めませ ん。
 
 では課長についてはどうでしょうか。役割の実態で①および②については管理職と認められたとします。次は③職務に見合う給与や賞与等でふさわ しい処遇を受けているかが問題となります。この会社の課長の役付手当3万円が金額として③職務に見合う報酬かどうかですが、これを検証してみましょ う。
 
 月の労働日はほぼ21日であり、一日8時間ですから、168時間が月の労働時間です。管理職手当と家族手当を除く課長の平均的な所定内給与は 35万円だとすれば、時給は2,083円となり、二割五分増しの残業単価は2,600円となります。月20時間ほどの残業が日常的にあるとすれば、その残 業手当相当額は52,000円となります。加えて必要なときには休日勤務もあるとすれば、6万円ほどが妥当な金額と言うことになります。賞与金額の計算に ついては問題ないとすれば、少なくとも管理職手当について、その勤務実態に即した金額の変更が必要となるでしょう。
 
 監督官に支給根拠を質問されたときに、まちがっても「課長は勤続が永く、偉いから3万円なんだ」と説明しないでください。
 
 
賃金管理研究所 所長   
弥富拓海 

 

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