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戦略・戦術

第228号 1,700円

社長のための“儲かる通販”戦略視点

 この数字は、中国最大のSNS「WeChat (微信)」の中で、商売を始めるための初期費用である。LINE+Facebookの中国版と言われているWeChatは、月間アクティブユーザー数が7 億6,200 万人と発表されている、スマホ用の無料通話・メッセンジャーアプリだ。
 
 中国ではSNS を利用して顧客を勧誘し、数珠つなぎで販売網を広げるマルチ商法により、ビジネスを行う企業や個人経営者が増加中で、現在WeChatでは、1,700円(100元)ほどの商品を1回購入すれば、誰でもSNSの中で商売を始められるという。WeChatには朋友圏(モーメンツ)と呼ばれるFacebookのようなソーシャル機能があり、この中でビジネスを行うことが可能なのだ。
 
 この朋友圏とは、自らの得意分野や人脈を利用して作る友達サークルのことだ。同窓会サークルをはじめ特定のスポーツ、芸術などの愛好者同士が会話を楽しむクローズドな仮想空間で、中には1,000人以上の朋友がいる人も珍しくない。このように朋友圏は、自らの人脈がもとになって作られているため信用度が高く、その信用力を利用してサークル仲間(フォロワー)に商品を販売するわけだ。
 
 ビジネスの仕方としては、まずはサークル内の人が興味を持ちそうな商品が掲載された微商平台(プラットフォーム)と呼ばれる商品販売の専用サイトのリンクを送り、それを見た友人の中で商品を購入した人がいれば、紹介者にはコミッションが入る仕組みだ。その商品を購入した人が、今度は違う友人に同じ商品を紹介してコミッションを得るといったように、販売網を数珠つなぎで拡散していくことができるクローズドな販売方法である。
 
 朋友圏では、常に様々な商品やサービス、飲食店などの情報が飛び交っており、友人に商品を紹介することに抵抗感がない。とくに中国人は、お気に入りの商品やおいしかった店などを親しい仲間に紹介し、その価値や体験を共有することに積極的で、情報の受け取り手もそれに応える傾向が強い。また中国では、実店舗やネット販売で粗悪な商品が出回っていることから、「友人の紹介する商品は信用できる」として、友人から友人への商売は、日本と違って相互扶助的な感覚であることも、拡大している一つの要因である。
 
 中国のネット通販市場は、「天猫(Tモール)」や「淘宝網(タオバオ)」が8割以上シェアを握っているが、出店料が170万円(10 万元) と高いことから、WeChat での商売に鞍替えする企業も増えている。このように初期投資の少ないWeChatを活用したビジネスは、今後、日本の中小企業が中国市場やインバウンドを取り込むための一つの手段となるだろう。
 
 
 
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