経営者感覚を身につけようとするからには、「収益の質」についても、多角的にチェックする習慣をつけていくことが求められる。
いくら売上が上がったところで、100円で仕入れたものを80円で売るならば、利益どころか赤字の垂れ流しであることは
自明の理であり、売上に収益が ともなってこそ、健全な会社といえる。
はたして、収益はどの程度あがっていれば、「良し」と判断すべきなのか。
売上数字に対してと同じように、最低3つの角度か らチェックしてみたい。
(1)経常利益が業界平均より高いか、低いかをチェックする
(2)収益性がライバル会社を上回っているか否かをチェックする
(3)収益性が改善傾向にあるか否かをチェックする
(1)(2)については、第42回で詳しく説明しているので、ここでは(3)についてのみ触れよう。
「改善傾向」をチェックするためには、過去から現在、現在から将来へと、まず2つに分けて考えるようにするのが基本。
そして大事なポイントは、今年から来年以降を展望した場合、改善計画の見込める読みができているかということである。
単純な例をとって、説明しよう。
経常利益率が10%のA社とB社があったとする。
A社は、一昨年は8%、去年は9%、今年は10%。そしてこのまま努力を続けていけば、
よほどのことがない限り、来年は11%台に改善することが可能である。
対するB社は、一昨年は12%、去年は11%、今年が10%まで落ちている。
そして、相当がんばっても来年はひと桁台への転落をまぬがれない。
同じ経常利益率が10%のA社とB社でも、両社には、月とスッポンほどの差があることは明白だ。
もっとも、それらのチェックから、自分の会社、自分の部署に何も心配事や問題がない、ということではチェックした意味がない。
会社の経営とか仕事の達成には終わりが無く、いってみれば、常にチャレンジする対象がある会社(ビジネスマン)が、優秀
な会社(ビジネスマン)ということになる。
売上と収益を前にして、漠然と数字を眺めるだけか、いろいろな角度からチェックする習慣、学習能力を身につけていくか。
経営的視点は前者からは生まれるものではない。
もちろん、経営者感覚というからには、労務や人事面もというように、総合的に判断力を磨いていかなければならない。
そのためには、直接体験が一番で、例えば、子会社に出向して学ぶのが早道だ。
仮に、あなたがそうした立場になったとしたら、左遷させられたなどと自暴自棄にならず、チャンスととらえればよいのである。
新 将命