今、東アジアの政治構図に激しい変化が起きている。
これまでの中朝対日韓の既存構図が崩れ、中韓対日朝の新たな構図が浮上してきた。
それを強烈に表したのは、7月3~4日の習近平中国国家主席の韓国訪問による中韓連携の強化、および拉致問題をめぐる日朝の急接近である。
中韓連携強化の狙いは1つが北朝鮮への警告(核とミサイル問題)、2つ目が日本への牽制(慰安婦と歴史認識および集団的自衛権問題)である。
中韓連携に対抗するように動き出したのは、拉致問題をめぐる日朝急接近である。
中韓対日朝の新たな構図は東アジアの地殻変動を端的に表し、関係各国に大きなインパクトを及ぼすのは間違いない。
中韓対日朝の新たな政治構図の浮上に最も困るのはアメリカである。
中韓連携も日朝接近もアメリカが外された形で進行しているからだ。
日韓はともにアメリカの同盟国である。
ところが韓国も日本もアメリカの意向に反し、アメリカに警戒される国に急接近している。
当然、アメリカの内心は穏やかではない。
万が一、中韓対日朝で衝突が起きれば、アメリカは一体どちらの味方になるのか。
これほど困ることはないだろう。
中韓対日朝の新たな構図はアメリカの「アジア回帰」戦略を狂わせる恐れがあり、固定化すれば東アジアにおけるアメリカの影響力の一層の低下が避けられない。
アメリカは中韓対日朝という構図の固定化を全力で阻止することが予想される。
7月3日に発表された中韓共同声明は、中韓自由貿易協定(FTA)の「年内妥結に向けて努力する」と明記している。
韓国の最大の輸出先は中国であり、2013年の対中輸出が輸出全体の26.1%を占め、2位の対米輸出(10%)の2.6倍に相当する。
一方、中国の最大の輸入国は韓国であり、韓国からの輸入が全体の9.4%を占める。
中韓FTAが妥結すれば、韓国が中国の主要貿易相手国として、巨大市場で低い関税などの恩恵を単独で受けられる可能性が出てくる。
尖閣問題や安倍首相の靖国参拝などによって中国市場で逆風を受けている日本企業は、ますます不利な立場に置かれることが避けられない状態となるだろう。