下駄もジャズも、どちらも流行っているものではない、
それどころか、衰退していく渦中にあるもの、
といっても過言ではない中、なぜ長く続けてこられるのか?
澤野工房のビジネスモデルとして
3つの"ない"が挙げられます。
1. ストリーミングやダウンロードをやらない
2. ベスト盤やコンピレーション盤を商品化しない
3. 広告を出さない
一般的な大手とは正反対のビジネスモデルですよね。
特に1と2は、利益を考えたら外せないところですけど、
澤野工房は違います。
ストリーミングやダウンロードをやらない理由は、
「形のないものには愛情を注げないから」
とのこと。
もともと大のジャズ好きでコレクターだった澤野さんとしては
絶対に譲れないところだ、と。
今や、世のほとんど全てのレーベルがストリーミング配信している中、
フィジカルメディアにこだわる姿勢を貫いています。
次に、ベスト盤やコンピレーション盤を商品化しない理由は、
「ジャズはアルバム単位で聴いてほしいから」
とのこと。
正直、ベスト盤は売れ筋ですし、手っ取り早くセールスが見込めますので、
世界中で増える一方ですし、近年は乱発も目に付きます。
そんな中、澤野工房の姿勢は異色であり、
ファンからの信頼にもつながっていると確信します。
本書を読んでいて感じるのは、澤野さんは澤野工房の社長ですけど、
それ以上に、一人のジャズファンであるということです。
だから、ジャズファンを裏切らない。
ジャズファンが喜ぶアルバムをつくる。
「いろんなことが便利になった現代、こんなことを言うと笑われるかもしれませんが、
仕事で楽をすると必ず振り出しに戻ります。省ける手間はもちろん省いた方がいい。
でも今は省いたらダメな手間まで省いてしまう商売をよく見かけます」
「回り道こそ一番の近道」
と澤野さん。
本書は澤野さんのジャズ愛と、長きに渡る下駄屋とジャズとの二足のワラジから得た
商売哲学にあふれています。
こんな本は他にありません。
音楽ファンはもちろん、経営者やリーダーにとっては、
実によきヒントや学び、刺激になる一冊。
メモしたくなることが、いっぱいです。
さっそく読んでみてください!
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『WHITE NIGHTS』 (演奏:ウラジミール・シャフラノフ・トリオ)
存続危機に立った澤野工房が、息を吹き返すキッカケになるとともに、
シャフラノフの日本での人気を決定づけた名盤。
合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。