うまくいく会社と、だめな会社の違いはどこにあるのだろうか? とよく考えるが、答えはいつも「財務的な視点を考慮した付加価値」があるか否かにおちつく。
昔、USA、UKに子会社をもつ中堅の機械販売の商社が破綻した。
高度な技術を使った設備・機械を売っているだけに、1台あたりの単価はめちゃくちゃ高額になり、資金回収は長期割賦になるのが常の会社だったが、それゆえに毎月安定した収入がはいってきていた。もちろん黒字経営で膨大な売掛金がその財務内容の良さを物語っていた。さらには、販売先が特定企業に集中することもなく、社内の与信管理もしっかりしていた。
ところが、ある日突然この会社は資金繰りに窮し破綻した。
当時は「どうして?」と驚いたものだが、財務についての話を聞いて納得した。
その会社、売れば売るほど、膨大な売掛金が増え、10年~15年にもわたっての長期間で販売代金の全額を回収していくことになる。バランスシートで言えば左側の借方(資産)が極端に増加していくが、貸方(負債・純資産)がついてこれなくなったのだ。さらに、この会社が倒産した時期は世界的な不況のまっただなか。売掛金のうちのいくらかが焦げ付き始め不良債権化しだした。
この2つの要因が、「もう与信は限界だろう」という金融機関の結論を導き、融資がストップ。輸出手形の買取にまで制約がつくようになり、さらに融資の内容や毎月の返済金額の負担に耐えきれなくなり倒産したのだ。
この会社は、ここでしか作れない高度な技術力で付加価値のある機械を作っていたのだが、財務を軽視していた。安定した収入があることから組織は硬直化し、また、売掛金が増えれば、それに対応した資金を金融機関が潤沢に融資してくれるという思い込みが先行し、「優良企業」という名前にあまんじて財務の見直しをしなかった点が致命傷となった。
この会社、倒産後も買手が数社も現れるほどの有望企業であったが、最後は資金を潤沢に持った企業によって買収され復活した。
このての黒字、付加価値のある優良企業は、早い段階から「いずれ」をみこして、財務内容を変えるビジネスモデルへの変更をするとか、バランスシートの借方が肥大化するなら、潤沢な資金を得るために上場を目指すとかをすべきなのだと思う。
「後の祭り」にならないためにも早い段階で「財務的な視点を考慮した付加価値」を考えたほうがいい。