menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

戦略・戦術

第136話 「銀行借入時の抵当設定に気を付けよ! その1」

強い会社を築く ビジネス・クリニック

「担保に頼らない融資をせよ!」「過去に設定した担保も外しなさい!」
と、金融庁は銀行に指導しています。
しかし実際には、今だに土地や建物を銀行融資の担保に差し出し、抵当権を設定されたままです、という中小企業がまだまだ多いのです。
 
銀行による不動産担保設定の内容を見せていただくと、単なる「抵当権設定」と「根抵当権設定」の、2つがあります。
抵当に「根」の一文字がつくかどうかの違いですが、どのように違うのか、ご存知でしょうか?これが、一字違いで大違い、なのです。
 
単なる「抵当権設定」の場合、その抵当権は、特定の融資に付きます。
ある建物を建てるのに、5千万円の融資を受ければ、その5千万円の融資に対する担保としての、抵当権です。特定の融資に付きますから、その融資の返済が完了すれば、「抵当権設定」は、自動的に消滅します。
特に手続きなどは必要ありません。
 
一方、「根抵当権」はどうなのか?
これは、これから先の融資に対して限度額を決め、その不動産に担保としての抵当権を付けるものです。5千万円の建物を建てるとして、
「今後の融資に備えて、根抵当の形で設定させていただいて、よろしいでしょうか?」
銀行員は、こう持ち掛けます。
「構いません。お願いします。」
と、よく理解せず経営者は安易に返答してしまいます。それに、借りなければ資金調達できないので、なおのこと、深く考えずに返答してしまうのです。
要は、ある融資をきっかけに、銀行員は「根抵当権」を付けにくるのです。
 
これから先の融資に対しての担保設定ですから、先に借りた5千万円の返済を終えても、自動的に消滅することがありません。返済を終えた時点で「根抵当解除」の申し入れをし、手続きをしない限り、「根抵当」は外れないのです。
これが、根のない「抵当権」との大きな違いです。
その会社に、文字通り「根」をはってしまうのです。で、他の融資で弁済できない事情が発生した場合にも、根抵当物件を、おさえにかかるのです。
 
なので銀行員は当然、「根抵当」にしたいのです。
「根抵当」があることで、返済が進んでくると、
「根抵当設定した枠がありますから、新たにお貸ししますよ。」
あるいは、全額返済されていても、
「限度額の枠設定がありますから、決算書をいただけますか。」
などと言ってきます。彼らはいつも、決算書を入手しておきたいのです。
つまり、「根抵当」は銀行員にとって、何かと都合がいいのです。
新たな融資や財務状況の確認など、つけ入る余地を得ることのできる、必須アイテムなのです。
 
では、どうすれば「根抵当」は解除できるのか?
基本的には、借入残高がないタイミングで、こちらから根抵当の解除を申し出る、しかないのです。具体的な手順としては、銀行に電話をして「根抵当解除」を願い入れ、必要書類をもらうことから始めます。ところが、根抵当設定後、数年も経つと、根抵当のことなど忘れてしまうのです。
借入残高がなくなっていても、ほったらかしになるのです。銀行員にとっては、ますます好都合です。
 
このように、単に手続きを進めるだけでも、労力がかかります。
返済を終え、今はさほど取引もなじみもない銀行支店に出向き、「根抵当」解除の申し入れ、必要書類に捺印などを進めてゆきます。
当然、各銀行とも、
「改めて、ご融資などいかがでしょうか?」などと言ってきます。
それだけでも、面倒くさいのです。
 
と、もっと面倒くさいのは、
「根抵当」設定後に、
「銀行合併で名前が変わってました!」とか、
「銀行統合でその支店がなくなっていました!」などという場合です。
その場合、「根抵当権」が、新たな銀行に譲渡されているのかどうか、から問い合わせて行かねばなりません。それさえ、
「まずどこへ行けばいいんだ?」などとなります。
で、譲渡先の新銀行とのやり取りが必要になるのです。
地方銀行は今、再編が加速しています。安易な「根抵当」設定は、解除時の面倒を高め、より時間を要することに、なるのです。で、またもや、その新銀行でも、
「これを機に、ご融資をいかがでしょうか?」
などと、言ってくるわけです。
 
今どきの銀行交渉では、不動産を担保設定しないのが当たり前です。
しかし、過去の担保設定が残っている場合はぜひ、内容を再確認し、設定解除の交渉を進めてください。それだけでも、肩の荷が軽くなるはずです。

 

第135話 「M&Aの相談が増えています」前のページ

第137話 「銀行借入時の抵当設定に気を付けよ! その2」次のページ

関連セミナー・商品

  1. 残席5枠 第38期「後継社長塾」

    セミナー

    残席5枠 第38期「後継社長塾」

  2. 井上和弘の経営の核心102項

    井上和弘の経営の核心102項

  3. 井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

    音声・映像

    井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

関連記事

  1. 第78話 「売上不振の本質は何か」

  2. 第144話 「中小企業はROEでなく、ROAで考えなさい」

  3. 第58話 「防災シミュレーションの必要性」

最新の経営コラム

  1. 第14講 経営者が弁護士と良好な関係を築く方法

  2. 第160回 ハイテク指輪で睡眠分析

  3. 第155回『2028年 街から書店が消える日』(著:小島俊一)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 戦略・戦術

    第23話 「バブっている時、中に居る人はわからない」
  2. マネジメント

    永続企業の知恵(15) 敗戦後改革は成長のチャンス(安田銀行)
  3. 社員教育・営業

    第126回 コミュニケーション上手になる仕事の進め方47「一筆箋の上手な使い方」
  4. 仕事術

    第97回 イヤホン「ネックバンド+ANC」のススメ
  5. 人事・労務

    第9話 これまで無限定の働き方が求められていた正社員と働き方の多様性
keyboard_arrow_up