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8軒目 「ユーモアのある最高級焼肉屋」

大久保一彦の“流行る”お店の仕組みづくり

「旺幸苑」(東京・新橋)
 

 今回は昔からの繁盛店ではなく、ここ数年で大逆転した店のご紹介をしよう。
 
 コンサルタントは短期的に売上を伸ばすと評価される。だから、長期的に店を続けることよりも、目先のことを優先してしまう。それに、永くお客 様に愛される店を作ることは店の運営にかなり依存す面が多い。
 
 いろいろな誘惑に負けず、お店の人のマインドを「お客様に喜ばれたい」というシンプルであたりまえなモードを維持させ続けなければならない。 また、今回紹介する店のような小さな店などは、お客様を限定し、欲を断ち切らねばならない
 
 飲食店というのは身近な商売だ。だれでもはじめようと思ったら始められる。
 
 ビジネスクラスのディスカウント航空券の草分けである旅行代理店を営む「旺幸苑(ワンシンエン)」のオーナーは、本業の将来性を斟酌し、飲食 店に参入した。
 
 飲食店は、店を始めればお客様が来やすい。一度は来店してみる。しかし、似たような店がいっぱいあるこの時勢、よっぽどのことがない限り二度 目の来店はない。
 
 最初来店してくれたお客様は種火だ。この種火をどう大きくするかで、店の将来は変わる。
 
お店の価値は、一年商売をすると下る。お客様が減っていくのだ。お客様が減っていく理由にはふたつある。「飽き」と「忘れる」こと だ。
 
お客様が飽きる原因は何だろうか?もっと魅力的なものの出現?それとも店自体への飽き?印象の強いものほど飽きられる。
 
もうひとつお客様は店を忘れる。
 
 私の指導先の、「旺幸苑」は客単価1万円の焼肉屋だから、忘れない要素を強く打ち出さなければならない。「旺幸苑」のある港区には名だたる店 があるのだから、肉がA5を使っているだけでは差別化はできない。
 
 そこで私は、社長をキャラクター化した。
 
 「ちょっとぶっきらぼうでたまにキレルでも、実はいい人」いう人格設定にし、エクセントリックな雰囲気を出すために、ピンクの蝶ネクタイにグ リーンのベストをまとってもらった。そのオーナーが毎回親父ギャグバリバリのイベントを考え、みんなに楽しんでもらう。謎解き絵葉書を作りお客様を摩訶不 思議な世界へ誘うようにした。
 
 マーケティング書にハイターゲットを狙えと書いてある。その場合、非日常の豪華な何かが多い。しかし、本当にお金も名誉も手にした人間は、そ のようなものを求めない。では何を求めるのか・・・それがユーモアである。
 
 「旺幸苑」はユーモアのある最高級焼肉屋として繁盛店の道を歩んだのである。
 

「旺幸苑」 (ワンシンエン)
 
東京都港区新橋2-15-12
KLセントラルビル4F
 
TEL03-3502-2985
営業時間 pm5:00~12:00
 
http://www.1shinen.com/

 

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