米朝首脳会談の5月中の開催のメドが立たない中で、韓国と北朝鮮による南北首脳会談は今月27日に開催されることが決まった。
南北首脳会談の焦点は、朝鮮戦争の休戦協定から平和協定への移行問題となるだろう。開催場所に選ばれたのがソウルでも平壌でもなく、65年前に休戦協定が署名された、南北境界線上の板門店であることが象徴的にそれを示している。当事者は朝鮮戦争を戦った北朝鮮と韓国、国連軍の主体となった米国、そして義勇軍を送り込んで参戦した中国である。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、米国が軍事攻撃をちらつかせて事態が緊迫する中で、北朝鮮に外交的逃げ道を用意した。
対話解決を目指す中国は、この南北の提案に同意の意思を示し、ロシアも前向きである。軍事解決も選択肢から外さない米国も、実は柔軟で、状況次第では外交的ビッグディールを想定している。
心もとないのは日本の対応だ。対話局面でも強硬策一辺倒で、蚊帳の外に追われつつある。
外交だけではなく、一般に交渉事で相手を追い込むには、長期戦略に基づいた逃げ道を一つだけ開けて置くことが肝要だ。逃げ道のない圧迫は、相手の暴発を招くことになり、解決の道は遠い。
2002年9月に電撃訪朝した小泉純一郎(首相)は、北朝鮮トップの金正日(キム・ジョンイル)との間で「日朝平壌宣言」に調印した。宣言では「双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した」と明記してある。小泉の戦略は、今回動いた文在寅の発想と同じだ。